天の川銀河中心のブラックホールに近づいた天体、実は巨大星

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昨夏に天の川銀河中心の巨大ブラックホールを接近通過した天体が、引き裂かれることなく生き残ったことがわかった。観測から、この天体は当初予測されたガス雲ではなく、連星が合体してできた巨大星とみられている。

【2014年11月6日 Keck Observatory

天の川銀河の中心にある、太陽の数百万倍もの質量を持つ巨大質量ブラックホールのそばを2013年夏に通過することで注目されていた天体G2が、意外にも何事もなく残っていることが米・ハワイのケック天文台での赤外線観測からわかった。これまでG2は地球3個分ほどの重さの水素ガス雲と考えられ、ブラックホール接近時に重力の影響で引き裂かれるようすを観測すれば、ブラックホールやその周辺環境について探る手がかりになるとして注目を集めていた。

ブラックホールのそばを通過したG2
ブラックホールのそばを通過したG2。ケック望遠鏡で撮影した赤外線画像では広がった像となりブラックホールの位置(緑)と重なるが、実際ははるかにコンパクトだ(提供:Andrea Ghez, Gunther Witzel/UCLA Galactic Center Group/W. M. Keck Observatory)

G2が重力で引き裂かれずそのまま残ったことから、実はその正体はガス雲ではなく、ブラックホールの周囲を一緒に回っていた2つの星が合体してできた、ガスと塵をまとった大質量星であるらしいことがわかった。研究発表者のAndrea Ghezさんによれば、銀河中心部にある大質量星の連星は合体すると100万年以上の間膨張し、その後で元のサイズに戻る。G2はこうした、膨張している状態なのだろう。

銀河中心に見られる大質量星の連星は形成過程がよくわかっていなかったが、多くはG2のような天体が膨張を終えて元に戻った姿なのかもしれない。また、従来は巨大質量ブラックホールの周囲には若い星が存在しないと思われてきたが見つかったことや、反対に年老いた星が多く存在すると思われてきたが実際には少なかったことなども、観測で明らかにされている。

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