リュウグウの砂に、生命材料につながる濃厚な塩水の痕跡を発見

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小惑星リュウグウの試料の分析から、アンモニアなどの窒素化合物が塩結晶の周辺に集まっている様子が明らかになった。母天体に高濃度塩水が存在し、生命材料につながる化学反応が起こりやすい環境だった可能性がある。

【2026年9月10日 京都大学

探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」の試料を地球に持ち帰ってから6年が経とうとしている。これまでの分析により、試料に有機物が豊富に含まれていることが明らかになっていて、そのなかにはアミノ酸や核酸塩基など生命に関わる化合物も含まれている。こうした物質は、リュウグウの元になった母天体の水に満ちた環境で合成されたと考えられている。

リュウグウの試料
リュウグウの試料(提供:JAXA

京都大学の松本徹さんを中心とする研究チームは過去の研究で、リュウグウ試料に炭酸ナトリウムや塩化ナトリウムなどを含む塩結晶の鉱脈がまれに含まれていることを明らかにしている。研究チームは今回、これまでほとんど調べられていなかったリュウグウの塩結晶について、アミノ酸などにも含まれる窒素化合物や有機物の分析を行った。

リュウグウ試料中の塩鉱物と粘土鉱物
リュウグウ試料中の塩鉱物(青)と粘土鉱物(茶)の電子顕微鏡画像(擬似カラー)と、アンモニウム分子(NH4+)模型のイラスト(提供:京都大学、以下同)

まず、塩結晶を含む粒子に吸収される赤外線のスペクトルから、アンモニアの存在を示す特徴が確認された。次に「X線吸収分光」と呼ばれる手法を用いて、窒素がどのような化学状態で存在するかを調べたところ、塩結晶の主成分である炭酸ナトリウムの近くにある粘土鉱物から、アンモニアを示すX線の吸収が見られた。粘土鉱物はケイ素と酸素を骨格とする板状の構造が幾層も重なる構造をしており、その板と板の間にアンモニウム(NH4+)という陽イオンの状態で窒素が入り込んでいると考えられる。

一方、塩を含まない別の試料からは、窒素の明瞭な特徴は確認されなかった。この結果は、アンモニアがリュウグウのどこにでも同じように存在するのではなく、塩結晶の近くに集中していることを示している。

さらに、炭素と窒素が強く結びついたニトリルもしくはシアンの化合物も塩結晶の周囲に多いことも示された。また、炭酸ナトリウムの内部に、窒素を含む塩である硝酸ナトリウム(NaNO3)の結晶も見つかった。

塩結晶の周りに窒素が集まった理由について、研究チームが考えるシナリオは次のようなものだ。太陽系初期、リュウグウの母天体は太陽系外側の低温領域で形成され、氷を多く取り込んだ。放射性元素の崩壊熱によって氷が融けて液体の水になり、水と岩石とが反応して粘土鉱物などの鉱物が形成された(水質変成)。その後、液体の水は凍結や蒸発によって減少し、液中の成分が濃縮されたという。

炭酸ナトリウムなどの塩結晶は、こうした過程で高濃度の塩水が最後に消失する際に形成されたと推測される。また、アンモニアなどの窒素化合物も濃い塩水に取り込まれて濃縮され、一部はアンモニウムとして粘土鉱物に取り込まれたと考えられる。

リュウグウの歴史
リュウグウの母天体の形成から水-岩石の反応、塩水が消失するまでの歴史。画像クリックで表示拡大

今回見つかったアンモニアなどの反応性の高い窒素化合物は、生命に関わる有機物の合成に必要な窒素源となり得るものだが、リュウグウの母天体では、このような窒素化合物が天体形成の初期に氷や有機物などとともに取り込まれ、その後、一部は水がなくなる最後の段階まで残っていたと考えられる。さらに、水が減って窒素化合物や有機物が濃縮した塩水では、水中の成分が出会いやすくなり、化学反応が進みやすくなった可能性も考えられる。

太陽系ではアンモニアを含む小惑星が次々に見つかっている。とくに、準惑星ケレスではアンモニアを含む粘土や炭酸ナトリウムが見つかっており、リュウグウと似た塩水の環境があるのかもしれない。今後の探査から、生命につながる化学反応を促す窒素化合物や有機物が濃縮された塩水環境が、他の太陽系天体でも見つかっていくだろう。

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