火星で一時的に急増したメタンと有機分子の発見

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NASAの探査車「キュリオシティ」が火星の大気を20か月かけて調べた結果、メタンの量が、ある期間だけその前後に比べ10倍も増加していることがわかった。また、ドリルで穴を開け採取した粉状の岩石サンプルからは、有機分子も検出された。

【2014年12月17日 NASA JPL

「キュリオシティ」は自身に搭載されているサンプル分析器「SAM」を使って、20か月間大気中のメタンを調べた。そして、2013年後半から2014年はじめに、平均7ppb(parts per billion; 10億分の1)という計測結果を計4回得た。実はその前後の数値は、平均でその10分の1しかなかったのである。

「メタンが一時的に増加したのは、供給源があるからに違いありません。原因として、生物的なプロセス、水と岩石との作用によるものなど、多くの可能性が考えられます」(キュリオシティ・チームの一員で、米・ミシガン大学のSushil Atreyaさん)。

また、「カンバーランド(Cumberland)」と名づけられた岩石にドリルで穴を開けて採取した粉状のサンプルからは、複数の有機分子も検出された。これは火星の地表における初の決定的な有機分子の発見だ。これらの有機分子は火星で形成されたか、または隕石によってもたらされた可能性がある。

カンバーランドにドリルで空けられた穴
カンバーランドにドリルで空けられた穴(提供:NASA/JPL-Caltech/MSSS)

炭素と水素を含む有機分子は、生命の元となる物質だ。キュリオシティによる大気と岩石サンプルの調査からは、過去において微生物が存在したとまでは言えないまでも、現在の火星が化学的に活性化していること、また過去の火星が生命にとって好ましい環境であったと言えそうだ。

「火星上の岩石から初めて有機炭素が確認されたことで期待が膨らみます。有機物の存在は重要です。なぜなら、その生成や岩石中に含まれることになった化学的プロセスを知ることができるからです。ゲールクレーターの堆積岩に代表される環境が有機物の蓄積に多少有利であったかどうかは定かではありませんが、地球と火星の違いについても情報が得られるでしょう。目下の大きな課題は、シャープ山において、もっと幅広い多様な種類の有機化合物類を含む岩石を発見することです」(キュリオシティにたずさわる米・マサチューセッツ工科大学のRoger Summonsさん)。

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