3連星の中で逆回転する惑星たち

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3つの恒星からなる連星K2-290の主星に、恒星の自転とは逆方向に公転する惑星が2つ見つかった。伴星の影響で原始惑星系円盤がひっくり返ったらしい。

【2021年2月24日 すばる望遠鏡オーフス大学恒星天体物理学センター

太陽系の8つの惑星は、ほぼ同じ軌道面の中で、太陽の自転と同じ向きに公転している。46億年前に太陽系が誕生したとき、円盤状に集まって回転するガスと塵の中心で太陽が、円盤の中で惑星たちが生まれたので、今でも回転方向がそろっているのだと考えられる。同様に、他の恒星系も原始惑星系円盤の状態から生まれるので、中心星の自転と惑星の公転はそろうのが普通だと考えられる。

だが系外惑星の中には中心星に対して大きく傾いた軌道面を公転するものも見つかっていて、極端なケースでは恒星の自転と惑星の公転が逆向きになっている。デンマーク・オーフス大学恒星天体物理学センターのMaria Hjorthさんたちの研究チームは、3例目となる逆回転惑星系を発見した。さらに、惑星の公転面をずらした原因の手がかりも初めて観測している。

公転が逆向きの惑星が見つかったのは、てんびん座の方向約897光年の距離にあるK2-290系である。K2-290は主星のK2-290 Aとやや離れたところにある暗めの伴星K2-290 BおよびK2-290 Cからなる3連星だが、このうち主星のK2-290 Aの周りに2つの惑星が見つかった。すばる望遠鏡などの観測によると、どちらの惑星も公転面がK2-290 Aの自転軸に対して124(±6)度も傾いているので、公転方向と恒星の自転方向が逆になっていることになる。

現在のK2-290系の模式図
現在のK2-290系の模式図。図の中心が恒星「K2-290 A」、右上の赤い星がその伴星。K2-290 Aを巡る2つの惑星の公転の方向は中心星の自転方向と逆行している。2つの惑星の公転面は揃っているが、中心星の赤道面に対して傾いている。内側の惑星(海王星くらいの大きさ))は約9日、外側の惑星(木星くらいの大きさ)が約48日の周期で、それぞれ公転している(提供:Christoffer Grønne/Aarhus University)

惑星の軌道面が大きく傾く原因として最有力だったのが、惑星同士の重力で軌道が変化してしまうとする惑星散乱モデルだ。この場合、惑星の軌道の傾きや逆行は後天的ということになる。一方、原始惑星系円盤の段階で伴星の重力で大きな傾きが生じるという理論も2012年に提唱されていた。しかし、個々の系外惑星についてどちらが当てはまるかを示す決定的な証拠は今まで見つかっていなかった。

K2-290 Aの場合、2つの惑星が同じように傾いているため、原始惑星系円盤の時点でずれていたというモデルの方が有利だ。研究チームは惑星系から100au(150億km)ほどの距離に位置する伴星Bに着目して数値計算を行い、この伴星の重力で原始惑星系円盤が傾いた可能性が高いと結論づけた。

「これが『逆向きな惑星系』の発見第1号というわけではありません。最初の例は10年以上前に見つかっています。ですが、K2-290系は大きなずれを引き起こした原因がわかったと言えそうな珍しいケースです。しかもそれは、研究者たちが他の惑星系で起こったと推測していた説明とは異なります」(米・プリンストン大学 Joshua Winnさん)。

今回の研究成果は、原始惑星系円盤の中からは恒星の自転と同じ向きに公転する惑星が生まれるはずだという前提に見直しを迫るものであり、連星系の中で惑星が誕生する過程を論じる上で重要なものとなった。

K2-290系における惑星形成時の模式図
K2-290系における惑星形成時の模式図。中心星を取り囲む原始惑星系円盤は、伴星(右上の赤い星)からの重力によって大きく傾き、ほぼひっくり返ったような状態になっている。この円盤から生まれた惑星は円盤の回転面に沿った軌道を持つことになる

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