オシリス・レックス、ベンヌへのタッチダウン成功
【2020年10月22日 OSIRIS-REx】
日本時間(以下同)の10月21日、NASAの探査機「オシリス・レックス」が小惑星「ベンヌ」のサンプル採取を実施し、「ナイチンゲール」と呼ばれる地点へのタッチダウンに成功した。
小惑星「ベンヌ」のサンプル採取を行う「オシリス・レックス」の想像図(提供:NASA/Goddard/University of Arizona)
21日の午前2時50分、オシリス・レックスはスラスターを噴射して、ベンヌ上空約1kmを周回する軌道から離脱した。上空約800mで長さ3.35mの試料採取アーム「TAGSAM」を伸ばしつつ、4時間かけて高度を約125mまで落とした。ここでスラスターを噴射してベンヌへ一気に下降し、10分後に再びスラスターを噴射して減速し、ベンヌの自転速度に探査機の動きを合わせた。
最後の11分間はオシリス・レックスの自動航行システムを使い、岩石を避けてナイチンゲールを目指した。直径約8mのナイチンゲールは、予想外に岩塊に覆われているベンヌの表面の中で、比較的開けている数少ない地点のうちの一つだ。オシリス・レックスから送られてきた信号によれば、21日午前7時8分に探査機は無事タッチダウンし、サンプルの採取に成功したとみられている。
「10年以上に及んだ計画の末にサンプル採取が成功し、チーム一同歓喜しています。まだ確認作業が残っていますが、タッチダウンが成功し、TAGSAMから(サンプル回収のための)ガスが噴射され、ベンヌの表面から探査機が無事に離れたことは、チームにとって大きな成果です。データを分析して採取されたサンプルの量を調べるのが楽しみです」(オシリス・レックス主任研究員 Dante Laurettaさん)。
SamCamが取得した画像から作成されたタッチダウン時の動画「OSIRIS-REx Sample Collection at Asteroid Bennu: SamCam View of TAGSAM」(提供:NASA Video)
TAGSAM先端のサンプリングヘッドはベンヌの表面に6秒間接触し、その間に窒素ガスを噴射して巻き上げられた物質を容器に回収した。運用チームはTAGSAM先端のカメラ「SamCam」がタッチダウンの前後に撮影した82枚の画像を受信しており、この画像や探査機の計器データなどを元にして採取されたサンプルの量を見積もる予定だ。
サンプルが少なくとも60g採取されていることが確認できれば、TAGSAMから探査機本体のカプセルへとサンプルが格納される。目標量に達していない場合は、2021年1月12日に再びタッチダウンが実施される。2度目のサンプル採取地点は、ベンヌの赤道付近に位置するクレーター内にある比較的岩塊の少ない「オスプレイ」と呼ばれる場所だ。サンプル格納後、オシリス・レックスは2021年3月にベンヌを出発し、2023年9月24日にサンプルを地球へ届ける予定となっている。
「太陽系の全歴史を目撃した太古の岩石のかけらが、何世代にもわたる科学的な発見をもたらすために持ち帰られる準備ができたかもしれません。次にどんなものが見られるのか、待ちきれない思いです」(NASA科学ミッション局副長官 Thomas Zurbuchenさん)。
〈参照〉
- OSIRIS-REx:NASA’s OSIRIS-REx Spacecraft Successfully Touches Asteroid
- NASA:OSIRIS-REx TAGs Surface of Asteroid Bennu
〈関連リンク〉
- OSIRIS-REx:
- NASA Science - Solar System Exploration:Why Bennu? 10 Reasons
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