ブラックホールからの最強のジェットで作られた銀河団内の空洞

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X線と電波による観測から、へびつかい座銀河団に巨大な空洞が存在していることが確認された。銀河団中心の銀河に潜む超大質量ブラックホールから噴出したジェットで形成されたとみられ、現象のエネルギー量はこれまでの記録より5倍も大きい。

【2020年3月6日 チャンドラヨーロッパ宇宙機関

約3億9000万光年彼方に存在するへびつかい座銀河団は、数千個の銀河や高温ガス、ダークマターが重力で結びついた巨大な領域だ。銀河団の中心に位置する銀河には超大質量ブラックホールが潜んでおり、周囲の物質を飲み込んでいる。そのブラックホールからは時おり、大量の物質とエネルギーがジェットとなって噴き出す。

NASAのX線天文衛星「チャンドラ」が2014年にこの銀河団を観測した画像から、不自然に曲がった縁のような構造が銀河団内に見つかっていた。これは、ブラックホールから噴出したジェットが銀河団内の高温ガスを削って形成した、巨大な空洞の壁の一部を見ているものだと推測された。しかし、空洞を作り出すのに必要とされるエネルギーの量が大きすぎると計算されたことから、過去の研究では、この構造はブラックホールのジェットで作られたものではないと考えられていた。

へびつかい座銀河団
へびつかい座銀河団の擬似カラー画像(差し渡し280万光年)。ピンクがX線、青が電波、白(メイン画像)が赤外線データに対応。黒い十字の位置に銀河団中心の銀河があり、点線は空洞の縁を示している(提供:X-ray: Chandra: NASA/CXC/NRL/S. Giacintucci, et al., XMM-Newton: ESA/XMM-Newton; Radio: NCRA/TIFR/GMRT; Infrared: 2MASS/UMass/IPAC-Caltech/NASA/NSF)

米・海軍調査研究所のSimona Giacintucciさんたちの研究チームは、ヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星「XMMニュートン」や西オーストラリアのマーチソン広視野電波干渉計、インドの巨大メートル波電波望遠鏡が観測したへびつかい座銀河団のデータから、この構造について再度研究を行った。

すると、XMMニュートンのX線観測でチャンドラと同様に、高温ガス内に縁が見つかった。また、電波観測からは、光速近くまで加速された電子から放射される電波で空洞が満たされていることが明らかになった。これらの結果から、観測された構造は銀河団の高温ガス内の空洞の縁であることが確認され、この空洞を生み出すような非常に大量のエネルギーを伴ったジェットがブラックホールから放出されたことが示された。エネルギーの量は、これまでに知られていた同種の現象のなかで最大だったものの5倍も大きく、観測史上最も大きいものとなる。

観測データからは、ジェット噴出はおそらく数億年前に起こったものであることや、最近はジェット噴出が止んでしまっているらしいことなども示されている。

宇宙最大の爆発現象に関する解説動画(提供:Chandra X-ray Observatory)

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