「はやぶさ2」、いよいよ4月5日に人工クレーター実験
【2019年3月19日 JAXA】
JAXAの探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに人工クレーターを作る領域は、2月22日に行われた第1回タッチダウンの着陸地点から東に経度で約90度離れた、北緯6度・経度303度を中心とする半径約200mの地域に決まった。衝突装置によってできたクレーターを見つけやすいことや、着陸可能な平らな領域(「S01」と命名)があることなどを条件として、この場所が選ばれたという。
人工クレーター形成実験で衝突装置を投下する目標地域(黄色の楕円)。「S01」は5月に予定されている第2回タッチダウンの着陸候補地点。「たまてばこ」は2月に行われた第1回タッチダウンでの着陸地点に付けられたニックネーム。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA)
4月5日に行われるクレーター形成実験(衝突装置運用)では、「はやぶさ2」は高度500mまで降下し、「SCI」と呼ばれる衝突装置を分離する。SCIは上記の目標地域に向かって自由落下し、分離から40分経った時点(高度約150m)で、内蔵されている爆薬がタイマーで起爆する。これによってSCIから銅製の衝突体が高速で撃ち出され、リュウグウの表面に衝突してクレーターを形成する。運用チームの推定では、直径数m〜10m程度のクレーターができると期待されている。
衝突装置「SCI」。直径30cmの装置内に円錐形の金属ケースがあり、この内部に爆薬が充填されている。探査機から分離されて40分経つとタイマーで起爆し、円錐部の底にある銅板が瞬時に変形しながら高速で撃ち出される。爆発によってSCI本体も四散する。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA)
衝突の際には大量の岩石片などが高速で放出されて危険なため、SCI分離から起爆までの40分の間に「はやぶさ2」はリュウグウの夜側に回り込んで放出物を避ける。この途中で分離カメラ「DCAM3」を分離し、このカメラが探査機に代わってクレーター形成のようすを撮影する。
衝突装置運用のイラスト。(左)「はやぶさ2」の底面から分離されるSCI。(右)上空でSCIが起爆し、リュウグウ表面に衝突体が撃ち込まれてクレーターが作られる。探査機(画面右下)はリュウグウの夜側に回り込んで放出物から逃れる。衝突の様子は「DCAM3」(画面右上)が撮影する(提供:JAXA)
この実験で放出された物質は、大きいものはクレーターの周囲に落下して積もり、放出速度の大きいものはリュウグウの重力を振り切って出ていく。細かい物質は太陽風などで次第に流される。衝突からおよそ2週間経つとリュウグウ周辺の放出物はほぼ消えるとみられ、これを待って「はやぶさ2」はホームポジションに帰るという。
衝突装置運用の流れ。噴出物が落ち着く約2週間後に探査機はホームポジションに戻る。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA)
実験に先立ち、3月8日には第2回着陸地点である「S01」領域の調査が行われた。また、クレーターを作る予定地域を実験前に観測しておく「CRA1」運用が3月20〜22日に行われる予定だ。4月22日の週には、衝突後の同地域の様子を調べて「CRA1」運用で得たデータと比較し、実験でできたクレーターを見つける「CRA2」運用が行われることになっている。その後、5月以降に第2回着陸が行われ、人工クレーターから放出された物質の採取が試みられる予定だ。
3月18日の記者説明会で、模型を使って衝突装置運用の説明をするJAXA宇宙科学研究所・久保田孝さん(右)と「はやぶさ2」プロジェクトエンジニア・佐伯孝尚さん(左)(撮影:渡邉耕平)
3月18日記者説明会の動画
(文:中野太郎)
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