470光年彼方の原始ミニ太陽系

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アルマ望遠鏡による観測で、誕生から数百万年という若い星の周囲に広がる原始惑星系円盤の塵の分布が高解像度でとらえられ、太陽系と似たような構造をしていることが明らかにされた。

【2019年3月19日 アルマ望遠鏡

太陽系以外に存在する惑星、系外惑星は、すでに4000個以上も発見されており、大きさや軌道などが多様な惑星がどのように形成されたのかについての研究がさかんに進められている。

惑星は、中心の恒星の周りに存在するガスと塵でできた「原始惑星系円盤」の中で、数百万年ほどの時間をかけて塵が集まり作られると考えられている。原始惑星系円盤を観測して塵の分布を調べることで惑星形成の手掛かりが得られるが、とくに地球のような岩石惑星の形成現場は中心の星に近く、見かけの大きさが極めて小さいため、観測がとても難しい。

非常に高い空間解像度と感度を備えたアルマ望遠鏡は、こうした原始惑星系円盤を詳細に電波観測することが可能だ。そこで、国立天文台ハワイ観測所の工藤智幸さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を使って、地球から約470光年の距離にある、おうし座DM星の観測を行った。そして、この星の周囲に広がる原始惑星系円盤の塵の分布を、6天文単位(約9億km)という細かさでとらえることに成功した。

「おうし座DM星」を取り巻く原始惑星系円盤
アルマ望遠鏡がとらえた「おうし座DM星」の周りの塵の円盤(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Kudo et al.)

観測の結果、おうし座DM星から約20天文単位(30億km)程度離れた場所にリング状の構造があることがわかり、その中の塵の分布が一様でないことが明らかになった。また、その内側にも弱い電波放射があることが初めて確認され、データ解析から、この部分は半径約3天文単位のリング状構造であることがわかった。さらに、60天文単位より遠い場所にも淡く拡がった放射があることもわかった。

先行研究ではこの原始惑星系円盤の中心付近に、塵がない穴のような構造が存在することが予想されており、その大きさが3天文単位ほどの小さいものか20天文単位ほどの大きいものかで解釈が分かれていた。今回の観測で最も内側(中心星から約3天文単位離れた領域)の位置にある塵の円盤が検出されたことで、おうし座DM星には2つのリング構造があることが明らかになり、どちらの予想も正しかったという結論が得られた。

おうし座DM星
おうし座DM星の想像図。星の周りに二重の塵の円盤がある(提供:国立天文台)

今回の観測結果を太陽系と比べてみると、太陽系とおうし座DM星系がよく似た姿をしていることがわかる。3天文単位ほどの小さいリングは太陽系では小惑星帯にあたり、20天文単位ほどの大きいリングは太陽系では天王星付近にあたる。大きいリング内の塵の分布が非一様であるという観測結果は、その部分に塵が多いこと、つまり惑星の材料が豊富に存在し大型の惑星が形成されやすいことを示唆するものだ。また、60天文単位より遠方の淡い塵の分布は太陽系では(距離は多少異なるものの)海王星以遠の太陽系外縁部に相当すると考えられる。

おうし座DM星は年齢が300万~500万歳の若い星であり、質量は太陽の半分程度なので、この惑星系は中心星が軽い「ミニ太陽系」の若かりしころの姿と言える。太陽系と似た姿の惑星系はあるのか、地球のような惑星は他に宇宙に存在するのか、という疑問に対する答えの候補となる天体を発見したという今回の成果は、系外惑星研究上の重要なマイルストーンとなるだろう。

こうした原始惑星系円盤が普遍的に存在しているかどうかを調べるためには、さらに多くの観測が必要だ。アルマ望遠鏡を用いた高い解像度の観測は始まったばかりで、今後の成果に期待がかかる。また、こうした系に実際に惑星ができているかどうかを調べるには電波ではなく赤外線での観測が必要となる。現在、すばる望遠鏡用の近赤外線・可視光線撮像器が開発中で、将来にはアルマ望遠鏡とすばる望遠鏡の協力連携から、おうし座DM星の素顔がよりはっきりわかるようになると期待される。

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