連星中性子星の衝突・合体現象から届く明るいX線残光

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昨年8月に検出された重力波源「GW170817」が4か月後にもX線で明るい様子が観測された。

【2018年1月24日 Chandra X-ray Observatory

うみへび座の方向1億3800万光年彼方の銀河「NGC 4993」で発生した重力波「GW170817」は、昨年8月にアメリカの重力波検出器「Advanced LIGO」が最初に検出し、その後欧州重力波観測所の重力波検出器「Advanced Virgo」、そして地上と宇宙の約70もの観測施設や観測衛星によって確認された。GW170817は従来観測されてきた様々な電磁波と重力波の両方で観測された初の現象となり、天文学の新たな時代の扉を開いた。

GW170817は中性子星同士の衝突・合体で発生したものだが、NASAのX線天文衛星「チャンドラ」によるGW170817の残光観測から、この際に生じたガンマ線バーストは、最初に考えられていたよりも複雑なプロセスによって発生したものらしいことが示唆された。「通常、ショート・ガンマ線バーストを観測すると、発生したジェット放射が周囲の物質にぶつかって短時間だけ明るくなり、すぐに暗くなります。しかしGW170817の場合は違っていて、明らかに単純なものではありません」(カナダ・マギル大学 Daryl Haggardさん)。

X線で観測した重力波源「GW170817」
「チャンドラ」がX線で観測した重力波源「GW170817」と銀河NGC 4993。(左)2017年8月と9月、(右)2017年12月(提供:NASA/CXC/McGill University/J. Ruan et al.)

チャンドラによる観測データは、中性子星同士の合体の残骸に関する複雑なモデルで説明できるかもしれない。一つの可能性として、合体によって発生したジェットが周囲にあるガスの残骸を衝撃加熱し、ジェットの周囲に高温の繭のような構造が作られ、それがX線や電波の波長で何か月にもわたって輝くと考えられている。

電波観測では残光が秋の間もずっと明るいことが確かめられていたのだが、GW170817の方向が太陽に近かった期間は、可視光線やX線では観測できていなかった。12月になってようやくX線観測が行われ、電波と同様に残光が明るいことが確認されたのである。「12月の初めにGW170817が観測できるようになったとき、私たちはこのチャンスに飛びつきました。思った通り、残光はX線でも電波と同様に明るかったのです」(マギル大学 John Ruanさん)。

「この中性子星同士の合体は、これまでに見たこともないものです。研究者たちにとっては、楽しみが続く贈り物のようなものです」(マギル大学 Melania Nynkaさん)。

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