自転していない中性子星の限界質量

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中性子星の質量はほとんどが太陽質量の1.4倍前後だが、なかには太陽の2倍以上の質量を持つものも見つかっている。最新の研究によると、自転していない中性子星の限界質量は太陽の2.16倍になるという。

【2018年1月22日 Goethe University Frankfurt

大質量星が超新星爆発を起こした後にできる中性子星は、半径10数kmほどの球体に太陽ほどの質量が詰まった超高密度天体である。質量が大きくなりすぎると重力でつぶれてブラックホールになってしまうため、どこまでも重くなることはできず、ほとんどの場合その質量は太陽の1.4倍前後だ。しかし一部には質量の大きな中性子星も発見されており、たとえばおうし座方向に位置するパルサー(高速で自転する中性子星)「PSR J0348+0432」の質量は太陽の2.01倍と見積もられている。

近くの星から物質を引き込むパルサーの想像図
パルサー(高速で自転する中性子星)の想像図。他の星と連星を形成していると、パルサーがその星の物質を引き付けてパルサーの周囲に円盤が形成される。パルサーの強力な磁場が青く図示されている(提供:NASA

では、中性子星の質量の上限はどのくらいだろうか。独・フランクフルト大学のLuciano Rezzollaさんたちがこのたび発表した研究成果によると、自転していない中性子星の最大質量は太陽の2.16倍だという。

Rezzollaさんたちは以前の研究で、自転する中性子星とその質量の上限の間にシンプルな関係を見出していた。また、自転する中性子星と自転しない中性子星について、それぞれの質量の上限には普遍的な関係が存在するという理論を導き出していた。この理論に、2017年8月に検出された中性子星同士の連星の合体に伴う重力波の観測データと、中性子星合体に伴う電磁波放射現象「キロノバ」の観測データを組み合わせることで、星の内部構造を表す状態方程式に依ることなく質量の上限が明らかにされた。

「理論研究の素晴らしさは、予測できるという点にあります。しかし、理論には不確実性があり、それを小さくするためには実験が必要です。数百万光年彼方で起こった中性子星同士の合体と私たちの理論研究との組み合わせにより、これまでに様々な推測がなされてきた謎を解くことができたのは、とても注目すべき成果といえるでしょう」(Rezzollaさん)。

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