新星爆発で大量に発生していた「すす」

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古典新星の観測から、新星爆発で飛び散ったガス中に大量の「すす」が発生していたことが明らかになった。爆発前の白色矮星に炭素が豊富に含まれていたとみられ、C2分子からすすへと大きくなっていく痕跡も世界で初めてとらえられた。

【2017年1月17日 京都産業大学すばる望遠鏡

古典新星とは白色矮星と太陽のような普通の恒星との連星系において、普通の恒星から白色矮星にガスが降り積もり、臨界点を超えた段階で白色矮星の表面で生じる爆発現象だ。この爆発によって飛び散ったガスから微小な粒子(ダスト)が大量に作られることがあるため、太陽系や他の星・惑星系の材料の供給源として重要な天体である。

新星爆発によるダスト形成を表したイラスト
新星爆発で高温のガスから分子が形成され、さらに複雑な分子へと化学反応が進み、最終的に塵(ダスト)が形成される。ダストは、太陽系のような星・惑星系の材料となる(提供:京都産業大学、以下同)

京都産業大学神山天文台の研究チームでは、2012年3月にアマチュア天文家の西村栄男さんが発見した新星「へびつかい座V2676(V2676 Oph)」を集中的に観測し、炭素原子が2個結合したC2分子を初めて新星で発見した。この新星のガスに炭素が多く含まれていることを示唆する観測結果だ。

さらに2013年と2014年に、すばる望遠鏡を使った分光観測でV2676 Ophから放射されている中間赤外線のスペクトルを調べたところ、非常に大量の煤(すす)、つまり炭素から成る微粒子が生成されていたことが明らかになった。

V2676 Ophの中間赤外線スペクトル
V2676 Ophの中間赤外線スペクトル

V2676 Ophに炭素が大量に含まれている理由について、研究チームでは、新星爆発の原因となる白色矮星が炭素や酸素に富んだタイプのものであったと考えている。新星爆発の際、白色矮星表面に積もったガスがもともと白色矮星にあったガスと強く混じり合い、そこに含まれていた大量の炭素や酸素などを含んで爆発したと考えられている。

V2676 Ophでは炭素の微粒子の他に、ケイ酸塩の微粒子も含まれていたことが突き止められており、さらに炭素を含む巨大分子と思われる物質の存在も明らかにされている。おそらく「C2分子→炭素を含む巨大分子→炭素の微粒子」という具合に次第に大きなサイズの物質が形成された結果だと考えられるが、こうした一連のサイズ成長の痕跡が観測されたのは今回のV2676 Ophが初めてだ。

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