星の形成を妨げる超大質量ブラックホールからの風

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星形成が行われておらず中心部の超大質量ブラックホールから時おり風が吹き出すという特徴を持つ、「レッドガイザー」と呼ばれるタイプの銀河の観測から、星形成を妨げる原因となる銀河中でのガスの加熱が超大質量ブラックホールからの風によって引き起こされていることが明らかになった。

【2016年5月27日 カブリIPMU

近傍宇宙では、若い青い星が少ないため赤く見える、星形成が行われていない銀河が大半を占めている。しかし、こうした星形成が不活発な銀河の中には、星形成に必要な材料となるガスはじゅうぶん存在しているにもかかわらず星形成が行われていない銀河もある。どのようなメカニズムで星形成が停止しているのかは謎であり、天文学者を長年悩ませてきた。

カブリIPMUのEdmond CheungさんとKevin Bundyさんたちの国際研究グループは、米・アパッチポイント天文台にある口径2.5mのスローン財団望遠鏡に取り付けた新型の分光装置をで銀河観測を行うプロジェクト「MaNGA(Mapping Nearby Galaxies at Apache Point Observatory)で、「Akira」というニックネームの銀河を観測した。Akiraは「レッドガイザー」呼ばれる新しく発見されたタイプの銀河の典型例にあたり、若い星が少ないため赤く、銀河中心の超大質量ブラックホールから時おり風が吹き出すという特徴を持っている天体だ。

AkiraとTetsuoのイメージ
銀河「Akira」(右)と「Tetsuo」(左)のイメージ図。Akiraの重力によりTetsuoのガスがAkiraの超大質量ブラックホールに引き込まれることで、ブラックホールからのアウトフローが生み出されてAkiraのガスを温め、それによりAkiraの新たな星形成が妨げられている(提供:Kavli IPMU)

観測の結果、超大質量ブラックホールに物質が落ち込む際に解放されたエネルギーによって周囲のガスが高速で外向きに広がって吹くとされる「アウトフロー」と呼ばれる風により、銀河中のガスが温められる様子がとらえられた。

Akiraの超大質量ブラックホールからのアウトフローは、「Tetsuo」というニックネームのさらに小さい銀河との相互作用によって生み出されていると考えられる。アウトフローによってガスが高温になるとガスが収縮できないため、新たな星が作れないのだ。星形成に必要な材料となるガスが銀河にじゅうぶんあっても、中心の超大質量ブラックホールからのアウトフローによって銀河中のガスが温められ、星形成が妨げられるという説を支持する結果である。

研究チームは観測データの解析を引き続き行い、レッドガイザー自体の性質や、レッドガイザーが銀河進化全般にどのように関係するのかを明らかにしていく予定だ。

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