130億光年彼方の銀河の分布図を作成、大規模構造の成長速度の測定に成功

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すばる望遠鏡を用いた銀河サーベイ「FastSound」により、130億光年もの遠距離にある約3000個の銀河までの距離に基づく宇宙3次元地図が作られた。地図中で銀河の運動を詳しく調べることで、大規模構造が成長していく速度が初めて測定され、遠方宇宙でも構造形成速度が一般相対性理論の予想と一致することが確かめられた。

【2016年5月12日 すばる望遠鏡カブリIPMU国立天文台

宇宙はビッグバンで誕生して以来、膨張を続けている。単純な理論予想ではその膨張速度は減速していくはずだが、反対に加速膨張していることが観測から知られている。

宇宙の加速膨張は、100年前にアインシュタインが発表した一般相対性理論に「宇宙定数」というものを追加することで理論的に説明される。一般相対性理論は、太陽系以下のスケールでは高い精度で実験的に検証されているものの、100億光年を超えるような宇宙論的なスケールでも成り立つかどうかはわかっていなかった。

理論の検証方法として、遠くの銀河を多数観測してその距離を測定し、宇宙における銀河の3次元分布、つまり宇宙大規模構造を調べるというものがある。網の目のような宇宙の大規模構造が広がるにつれて個々の銀河がどのくらいの速度で運動しているかを調べることで大規模構造の成長速度を測り、その速度が一般相対性理論の予想と合っているかどうかを検証するのだ。

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)、東京大学、東北大学および京都大学から成る研究グループは、すばる望遠鏡のファイバー多天体分光器「FMOS(Fiber Multi-Object Spectrograph)」を用いた銀河サーベイ「FastSound(FMOS Ankoku Sekai Tansa(暗黒世界探査)Subaru Observation Understanding Nature of Dark energy)」を行って、こうした遠方宇宙での重力理論の検証を試みた。

FastSoundは、赤方偏移の値が1.2から1.5(共動距離で約124億光年から147億光年)の宇宙における銀河までの距離を測定するサーベイだ(共動距離:観測する天体からの光がわたしたちに届くまでの時間に、これまでの宇宙膨張を考慮して算出される距離)。2012年から2014年にかけて行われた観測をもとにして、約3000個の銀河からなる宇宙の3次元大規模構造地図が2015年に完成した。

FastSoundサーベイによって明らかになった3次元銀河地図(提供:国立天文台、一部データ提供:CFHT, SDSS)

研究チームは地図中で個々の銀河の運動を調べ、大規模構造の成長速度を測定した。測定の統計的有意度は99.997%で、100億光年を超える遠方宇宙においてこれほど高い有意度で成長速度を測定できたのは世界で初めてのことだ。測定値を一般相対性理論の予想値と比較したところ、測定誤差の範囲で一致していることが確かめられ、この距離でも一般相対性理論の正しさが検証された。

宇宙定数の物理的な起源は依然として謎であり、今回の測定誤差の範囲内でわずかに重力が一般相対性理論からずれている可能性も否定できないものの、今回の結果は宇宙論研究を進めていくうえで重要なステップとなる。

「宇宙の三次元マップを作るための本格的な銀河サーベイを日本が主導して行ったのは初のことで、それにより一般相対性理論誕生から100年という節目に、史上最遠方の一般相対論の検証結果を発表でき、感慨無量です」(カブリIPMU 奧村哲平さん)。

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