粒子数2400億で天の川銀河の進化をシミュレーション

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約2400億個の粒子を用いた、過去最大規模の天の川銀河進化の数値シミュレーションが行われた。銀河内の星の観測データと直接比較できるシミュレーションデータを得ることができるようになり、天の川銀河の構造や進化過程が明らかになっていくと期待される。

【2014年11月13日 国立天文台

天の川銀河の円盤の中に位置する太陽系からは、渦巻く銀河の姿を直接見ることはできない。その構造を知るには、銀河内の星の位置や速度の正確な測定が必要であり、欧州の位置天文宇宙望遠鏡「ガイア」や開発中の日本の衛星「ジャスミン」によって今後さらに正確にわかるようになる。

観測データを読み解くには、星の運動が銀河のどのような構造を反映しているかを知っておく必要もある。そのためには、銀河の構造と星の運動の関係を直接知ることができるシミュレーションが重要な役割を果たす。観測とシミュレーションとを合わせることで、天の川銀河の構造とそのメカニズムが初めて明らかになるのだ。

シミュレーションと観測を比較するためには、数千億個もの星や銀河周囲のダークマターの間に働く重力を計算して個々の星の運動を導きださなければないが、これまでは1000個程度の星を1つの粒子にまとめて置き換えるなど、簡略化した計算が行われてきた。

国立天文台理論研究部の藤井通子さんらの国際研究チームは、より現実に即したモデルとして2400億個の粒子を用いて天の川銀河を表現し、スーパーコンピュータによるシミュレーションを行った。この粒子数は従来の計算の数百倍から数千倍で、世界最大規模の天の川銀河シミュレーションだ。

シミュレーションで計算された銀河の姿
シミュレーションで計算された銀河の姿。緑色部分は、重力計算のための領域分割を可視化したもの。(提供:Bedorf et al. (2014))

シミュレーションで再現された天の川銀河を可視化したもの
シミュレーションで再現された天の川銀河を可視化したもの。青や白が星、ダークマター粒子は表示していない(提供:SURFsara, Bedorf et al. (2014) and NVIDIA)

研究チームが開発したアプリケーション「Bonsai」では、星と星の間に働く重力の計算を全てGPU(*1)で、通信とそれに関わる計算はCPU(*2)で行うことで、GPUとCPUを同時にフル活用できるように工夫されている。計18600台のGPUを用いて行われた今回のシミュレーションの性能と科学的意義は高く評価され、今月21日に決定する2014年ゴードン・ベル賞(*3)の最終候補として選出されている。

観測データとシミュレーションで得られた結果を比較することにより、天の川銀河の棒状構造や渦巻き腕の位置、大きさ、それらの構造の進化過程が明らかになっていくだろう。さらに、シミュレーションによって作られる天の川銀河からは、観測では直接見ることのできない銀河の構造も解明できると期待される。

1: コンピュータの中で、画像演算処理を行うための専用のプロセッサ

2: コンピュータを構成する部品のひとつで、プログラムに従って演算・計算を行う電子回路や演算ユニットのこと

3: 計算機設計者として有名なアメリカのゴードン・ベル氏により、並列計算機技術開発の促進のため1987年に創設された賞