日本初の位置天文観測衛星「ナノジャスミン」、2011年8月打ち上げ

【2010年4月13日 国立天文台

日本初の位置天文観測衛星「Nano-JASMINE(ナノジャスミン)」が、2011年8月に打ち上げられることが決まった。わずか35kgの超小型衛星ながら、世界で2番目の位置天文観測衛星として、これまでより1桁精度の高い情報を含む恒星位置カタログを作成できると期待されている。


観測を行うナノジャスミンの想像図

観測を行うナノジャスミンの想像図。クリックで拡大(提供:国立天文台、以下同様)

ナノジャスミンの試作品の外観の画像

ナノジャスミンの試作品の外観。クリックで拡大

国立天文台JASMINE検討室では、JASMINEシリーズと呼ばれる複数の人工衛星からなる計画を進めている。

人工衛星は、観測を行う順番に、超小型の「Nano-JASMINE(ナノジャスミン)」(主鏡口径5cm)、「小型-JASMINE」(主鏡口径30cm級)、中型の「JASMINE」(主鏡口径80cm級)の3つである。その目的は、銀河系内、とくに銀河面や銀河中心部の球状構造であるバルジのサーベイを行い、数億個の星の位置や距離、固有運動を高精度で測定することにある。

JASMINEの最大の特徴は、赤外線で観測するという点である。天の川銀河の円盤には大量のガスがあり、星の光を吸収してしまうが、赤外線はガスによる吸収を受けにくいため、銀河の中心付近で観測できる星の数は可視光観測よりはるかに多くなる。

そのJASMINEシリーズのうちの1つで、国立天文台や東京大学、京都大学が中心になって開発を進めている「ナノジャスミン」が、2011年8月にブラジル・マラニョン州にあるアルカンタラ発射場からウクライナのサイクロン-4ロケットに搭載されて打ち上げられることが正式に決まった。

ナノジャスミンは日本初の位置天文観測衛星で、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のヒッパルコス(※)に続く、世界で2番目の位置天文衛星となる。わずか35kgの超小型衛星ながら、ヒッパルコスと同程度の精度を持つ。ヒッパルコスによる恒星の位置カタログと組み合わせることで、これまでより1桁精度の高い恒星の運動情報を含む位置カタログを作成できると期待されている。

なお、ナノジャスミンの観測期間は約2年と予定されている。残る2機の観測衛星のうち、小型-JASMINEの打ち上げ目標は2015年頃に、中型のJASMINEは2020年代に設定されており、小型-JASMINEがバルジの一部を、中型のJASMINEがバルジのほぼ全域のサーベイを行う予定になっている。

※ヒッパルコス(Hipparcos:高精度視差観測衛星の略):1989年8月8日ヨーロッパ宇宙機関(ESA)によって打ち上げられ、1993年に運用終了。恒星の位置や恒星までの距離を大気の影響のない宇宙空間で精密に測定することを目的とし、観測終了までに太陽系からの距離が約330光年以内にある恒星(約12万個)までの距離を精密に定めた。

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