突発現象をとらえる、すばる望遠鏡の新分光器「NINJA」が始動

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すばる望遠鏡に新たな近赤外線分光器「NINJA(ニンジャ)」が設置され、初の試験観測が行われる。重力波源などの突発天体や宇宙初期の遠方銀河の観測に活躍しそうだ。

【2026年7月22日 すばる望遠鏡

2015年の初検出以来、重力波の観測によって中性子星どうしの合体のような激しい天文現象がとらえられるようになった。このような突発現象は、発見から数日で刻々と状態が変化し、急速に暗くなってしまう。こうした現象を素早く分光観測することができれば、合体のメカニズムや、合体で金や白金などの重元素が作られる過程を詳しく調べられるようになる。

このような「時間との勝負」となる突発現象を観測できる新たな近赤外線分光器「NINJA(ニンジャ、Near-INfrared and optical Joint spectrograph with Adaptive optics)」がすばる望遠鏡に搭載され、この夏に初の試験観測を迎える。

NINJAの仕様
NINJAのイラスト。レーザートモグラフィー補償光学装置と組み合わせることで、回折限界近くまで改善された近赤外線の星像を高い波長分解能で分光できる(提供:国立天文台)

NINJAは「即応性」「高効率」「高感度」という3つの特徴を備えた分光器だ。通常、大型望遠鏡の焦点位置では様々な観測装置を付け替えて観測を行うことが多いが、NINJAはすばる望遠鏡の赤外ナスミス焦点面に常設されるため、装置を交換せずにすぐ観測を開始できる。

すばる望遠鏡の4焦点
すばる望遠鏡の4つの焦点。NINJAは主鏡と副鏡で反射した光を第3鏡で高度軸方向に取り出した「赤外線用ナスミス焦点」に設置される(提供:国立天文台

また、NINJAでは波長0.85~2.5μmの近赤外線スペクトルを一度に取得できる。すばる望遠鏡にこの波長範囲を一度に観測できる分光器が搭載されるのは今回が初めてで、効率の良い分光観測が可能になる。さらに、大気のゆらぎによる星像のぼけを補正する「補償光学」とNINJAを組み合わせて、より暗い天体まで高い感度で観測できるようになる。これらの特徴を生かして、NINJAは突発現象だけでなく、宇宙初期の遠方銀河の観測でも威力を発揮すると期待されている。

NINJAの開発は、国立天文台先端技術センター(東京都三鷹市)を拠点に、早稲田大学と東京大学の3名の大学院生が中心となって進められた。今年2月に各種性能試験を終えて三鷹から米・ハワイへ輸送され、3月には開発メンバーである早稲田大学の佐藤理究さんが、ハワイ島ヒロの山麓施設でNINJAの動作試験を行った。現在は初観測に向けて、すばる望遠鏡からNINJAを制御するソフトウェアの開発が行われている。

「先端技術センターで、自分が関わった装置が少しずつ形になっていく過程を見るのは間違いなく楽しかったです。装置を送り出したときは、本当にハワイに行く実感がわきませんでしたが、自分が実際にハワイに来て、無事に到着した装置に触れたときは感慨深いものがありました。この装置を使って遠方銀河などの観測研究に取り組めることを楽しみにしています」(佐藤さん)。

NINJAと開発チーム
(上)国立天文台先端技術センターにて、ハワイへの輸送を控えたNINJAの内部を確認する佐藤さん(中央)と国立天文台科学研究部の守屋尭さん(左)。(下)ハワイ観測所山麓施設に到着したNINJAと開発チームの東谷千比呂さん(国立天文台先端技術センター;右)と森鼻久美子さん(ハワイ観測所;中央)、ハワイ観測所装置エンジニアリング部門(当時)のMatthew Wungさん(左)(提供:国立天文台)

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