H-IIA最終号機による地球観測衛星「いぶきGW」の打ち上げ成功

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29日未明、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」を搭載したH-IIAロケット50号機が種子島宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは計画通りに飛行し、衛星は正常に分離された。H-IIAロケットの打ち上げは今回が最後となった。

【2025年6月30日 JAXA

6月29日午前1時33分、温室効果ガス・水循環観測技術衛星[いぶきGW」(GOSAT-GW)を搭載したH-IIAロケット50号機が鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは計画通りに飛行し、衛星は正常に分離され、打ち上げは成功した。

「いぶきGW」の打ち上げ
「いぶきGW」の打ち上げ(提供:MHI Launch Service

その後「いぶきGWは」太陽電池パドルを正常に展開し、電力が得られていることが確認された。衛星は約3か月間をかけて機能確認などの初期運用が行われた後に定常運用へ移行し、約1年後に観測データの提供を開始する。

2009年に初号機が打ち上げられたGOSATシリーズは、二酸化炭素とメタンの平均濃度を唯一観測できる衛星としてデータを提供し続けている。「いぶきGW」は、2012年に打上げられた水循環変動観測衛星「しずく」による降水量、水蒸気量、陸域の水分量、積雪深度などの観測と、2018年に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2」による二酸化炭素とメタン濃度を観測するミッションを継承する。

「いぶきGW」に搭載されている温室効果ガス観測センサ3型「TANSO-3」は、世界で唯一の広域モードと精密モードとを切り替える機能を駆使し、全球規模で温室効果ガスの分布や時間変化をとらえて、温室効果ガスの排出削減に貢献する。また、高性能マイクロ波放射計3「AMSR3」には過去20年世界をリードしてきたJAXAの技術が生かされていて、大気などから放射されるマイクロ波をとらえて陸域、海洋、雪氷、大気、水蒸気、海上の温度など水にかかわる観測を行う。単独のセンサーとしてこれだけの観測をこなすのは、世界でAMSR3だけだ。

広域モード観測を行う「いぶきGW」の想像図
高度約660kmの太陽同期準回帰軌道上から広域モード観測を行う「いぶきGW」の想像図(提供:JAXA


今回「いぶきGW」を所定の軌道へ届けたH-IIAロケット50号機は、2001年から24年間、日本の基幹ロケットとして人工衛星や探査機を打ち上げてきたH-IIAロケットの最終号機として有終の美を飾った。今回の打ち上げ成功で、H-IIAロケットの打ち上げ成功率は98%(49/50)となった。

29日に行われた打ち上げ経過記者会見では、今回の打ち上げ執行責任者を務め、会社生活のほとんどをH-IIAロケットに費やしてきた三菱重工業株式会社の鈴木啓司さんが、打ち上げ前の朝礼時に「50番目の初号機のつもりで取り組もう」と関係者に言葉をかけたことが語られた。鈴木さんの言葉には「特別なことをするのではなく、今までやってきたことと同じことを確実・丁寧にやっていこう。これまでも1機1機に手を抜くことなくやってきた。今回も同じように扱おう」という思いが込められていたという。

また、JAXA理事長の山川宏さんは、退役したH-IIAロケットと後を引き継ぐH3ロケットについて次のように話した。「本日、H-IIAロケット50号機は最終号機としてその役割を全うしてくれました。開発機関であるJAXAとしても非常に感慨深い思いです。H-IIAロケットは、日本の宇宙活動の自立性に非常に大きく貢献したと考えております。さらに打ち上げ機数を着実に増やし、良い輸送サービスが提供できるように、H3ロケットの高度化を進めていきます」。

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