新型補給機「HTV-X1」搭載のH3ロケット7号機、打ち上げ成功

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宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機を搭載したH3ロケット7号機が、10月26日に種子島宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは計画通りに飛行し、HTV-Xは正常に分離され所定の軌道に投入された。

【2025年10月27日 JAXA(1)(2)

10月26日午前9時00分15秒、日本の新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機(以下 HTV-X1)を搭載したH3ロケット7号機が鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは正常に飛行し、打ち上げの14分4秒後にHTV-X1を分離した。その後、HTV-X1は太陽電池パドル2翼を展開し、姿勢を確立したことが確認された。なお、打ち上げは当初10月21日に予定されていたが、強風や落雷の可能性があったため延期された。

H3ロケット7号機の打ち上げ
H3ロケット7号機の打ち上げ(提供:JAXA

HTV-X1は10月30日未明に国際宇宙ステーション(ISS)に到着予定で、現在ISSに長期滞在中の宇宙飛行士・油井亀美也さんがロボットアームを操作して同機を把持する。その様子は、JAXAのYouTubeチャンネルでライブ配信される。油井さんは、2015年のISS長期滞在中に「こうのとり」5号機を把持した経験を持つ(参照:「油井さんがISSから帰還」)。

HTV-Xは、輸送だけでなく軌道上実験プラットフォームの役割も担う二刀流の宇宙機だ。輸送機としては、2009年から2020年まで9機にわたってISSの利用・運用に貢献した補給機「こうのとり」の後継機で、「こうのとり」の約1.5倍となる約6tの搭載能力を持つ。また、ISS離脱後に最長1年半軌道上で飛行を続けて、新技術の開発などを支える実験を行う技術実証プラットフォームともなる。

HTV-Xの特徴
HTV-Xの特徴。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA

その初号機であるHTV-X1は最長6か月間ISSに係留され、廃棄カーゴの積込みなどが行われた後にISSから離脱し、約3か月間の技術実証ミッションフェーズへ入る。実施される3つのミッションのうちの一つは、宇宙ゴミとなった後の物体の軌道を把握するためにJAXAが開発した衛星レーザ測距(SLR)用小型リフレクター「Mt. FUJI」の性能評価だ。「Mt. FUJI」を搭載するHTV-X1に特殊な飛行をさせ、その姿勢運動のデータを集める。このような実データを用いた姿勢運動の推定精度評価は世界初だ。

3つの技術実証ミッション
3つの技術実証ミッション。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA

一方、H3ロケットの打ち上げは、これで5機連続の成功となった。今回の7号機は、全長約8m、最大重量約16tのHTV-X1を搭載するために個体ロケットブースターを4本に増やして推進力を強化した「H3-24W」形態としての初フライトとなった。H3ロケットのなかで最も打ち上げ能力の大きい形態の打ち上げ成功により、今後月面探査プログラム「アルテミス計画」や将来の宇宙探査ミッションへの貢献が期待される。

さらに7号機では、HTV-Xや静止トランスファ軌道(GTO;Geostationery Transfer Orbit)へ大きな衛星を運ぶためのオプションとして、第2段ロケットの飛行後半に、新規に開発された自律飛行安全システムの動作検証のためのデータが取得された。

これは、機体や飛行経路に異常が発生した際、ロケットが地上からのコマンドに頼らず自律的にエンジン停止やロケットの破壊を判断して飛行を中断する仕組みだ。現在のロケットの打ち上げ能力は、地上のコマンド局の可視範囲で衛星を軌道投入させるために、経路の蛇行や高度の引き上げという制約を受けている。自律飛行安全システムを備えた打ち上げで、コマンド局の可視範囲を超えてロケットがエンジンを燃焼させることができれば、ロケットの能力を最大限引き出せるというわけだ。

今回得られたデータの分析で飛行実証の成功が確認されれば、8号機以降のH3ロケットへ自律飛行安全システムの搭載が可能となり、打ち上げ能力がさらに向上する。このシステムは、JAXAが今後探査機の打ち上げを予定している火星衛星探査計画「MMX」などにおいて、地上局のない領域での探査機の航行にも役立つ。

H3ロケット「H3-24W」形態
H3ロケット「H3-24W」形態。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA

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