高速電波バーストの正体を、出現する銀河の環境から探る

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星の材料である分子ガスの観測から、未だ謎の多い天体現象である「高速電波バースト」が一般的な星形成銀河とは異なる銀河環境で出現することが明らかになり、その起源に関する手がかりが得られた。

【2022年12月5日 東京大学大学院理学系研究科・理学部

高速電波バースト(Fast Radio Burst; FRB)は、宇宙のどこかから突発的に、数マイクロ秒~数ミリ秒という短時間の強力な電波パルスが届く現象だ。2007年に初めて見つかって以来これまでに数千例観測されているが、その正体はよくわかっていない。FRBの大半が天の川銀河の外から届く中、2020年には天の川銀河内のマグネター(強力な磁場を持つ中性子星)から似たような電波パルスが検出されたことで注目を集めたが、他のFRBもマグネターに由来するかは不明だ。

東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターの廿日出文洋さんたちの研究チームは、FRBが出現した銀河(母銀河)の環境を調べることで、その環境で誕生しやすい天体の中からFRB起源天体の候補を見つけるというアプローチの研究を行った。廿日出さんたちは天体の材料となる分子ガスに注目し、その指標となる一酸化炭素分子からの輝線をアルマ望遠鏡で観測した。

これまでにFRBの母銀河で分子ガスの観測が試みられたのは(天の川銀河を除くと)2例しかなく、このうち検出に成功したのは近傍の銀河であるおおぐま座のM81(約1200万光年)だけだった。今回はより遠くにある3つのFRB母銀河を観測し、つる座の方向約3.6億光年の距離にある母銀河で分子ガスを検出することに成功した。

FRB 20180924B母銀河の一酸化炭素分子輝線の積分強度図
高速電波バーストFRB 20180924Bが起こった母銀河における一酸化炭素分子輝線の分布。明るい部分ほど信号が強いことを表す。緑丸がFRBの位置。左下の楕円はアルマ望遠鏡の空間分解能(提供:東京大学大学院理学系研究科・理学部リリース、以下同)

分子ガスを検出できなかった母銀河についても、観測限界を踏まえれば質量の上限値を見積もることができる。今回と過去の観測を合わせた6つのFRB母銀河をサンプルとして解析を行ったところ、分子ガスの質量が多いほど銀河で星が生まれるペースも速くなるという一般的な傾向が6つの母銀河では必ずしも当てはまらないことが示された。また、FRB起源天体の候補であるガンマ線バーストや重力崩壊型超新星の母銀河とも傾向が異なるため、FRBを放出したのは別の天体である可能性が示唆された。

様々な銀河における分子ガス質量と星形成率との比較
様々な銀河における分子ガス質量と星形成率の関係。橙色の四角が今回の研究対象となった6つのFRB母銀河で、左向きの矢印は上限値であることを示す。一般的な星形成銀河(水色の十字)では分子ガス質量と星形成率との間に相関があるのに対して、FRB母銀河はそこから外れることもある。また、ロングガンマ線バースト母銀河(緑の菱形)、重力崩壊型超新星母銀河(黄色の三角)とも傾向が異なる

今回の研究で提示された手法を元に、分子ガスを観測したFRB母銀河のサンプルを増やすことで、FRB起源天体の理解が進むと期待される。

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