天の川銀河に未知の衝突の痕跡

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位置天文衛星「ガイア」の観測データから、80億~100億年前に天の川銀河へ衝突合体した銀河の痕跡が見つかった。これまでに判明した過去の銀河衝突は6例目となる。

【2022年2月25日 ヨーロッパ宇宙機関

私たちが存在する天の川銀河は約120億年前に形成され始めたと考えられているが、その120億年の歴史は、他の銀河との衝突合体の連続だった。こうした歴史を物語る、過去に衝突した銀河の跡は、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」で得られた無数の恒星の位置と速度のデータから次々と見つかっている。

独・マックスプランク天文学研究所のKhyati Malhanさんたちの研究チームも、天の川銀河と合体した銀河の残骸を探している。注目しているのは、天の川銀河の円盤面から離れた球状の領域「ハロー」だ。落下してきた銀河が短時間のうちに重力で引き裂かれてしまうと完全に散らばってしまって痕跡が残らないが、そのプロセスがゆっくり進めば、ハローの中に「恒星ストリーム」と呼ばれる星の軌跡が残る。また、合体した銀河が連れてきた球状星団や衛星銀河も残っているかもしれない。

Malhanさんたちはガイアのデータから、170個の球状星団、41本の恒星ストリーム、46個の衛星銀河を検出した。これらをエネルギーと運動量に応じて分類したところ、はっきりと同じ傾向を示すグループが6つ見つかった。それぞれのグループは、かつては独立した銀河だったものが、天の川銀河に取り込まれた成れの果てだと考えられる。

見つかったグループのうち5つは過去の研究で見つかっていたが、6つ目は今回初めて確認されたものだ。研究チームはその起源となった銀河に、ギリシア神話に登場する原初の海神にちなむ「Pontus(ポントゥス/ポントス)」という名前を与えた。

ポントゥスによってもたらされた天体の位置
ガイアのデータに基づく天の川の画像に、恒星ストリームや球状星団(四角)、衛星銀河(三角)を重ねて描画。紫色が今回見つかった「ポントゥス」由来とみられるもので、ヘルクレス座の球状星団M13、やぎ座の球状星団M30などが含まれている。画像クリックで表示拡大(提供:ESA/Gaia/DPAC, CC BY-SA 3.0 IGO)

Malhanさんたちの分析によると、ポントゥスは80億~100億年前に天の川銀河へ落ち込んだとみられる。他の衝突合体イベントのうち、4つも同じころに起こったと考えられている。残る1つ、いて座矮小銀河の最初の衝突は50~60億年前と比較的最近であるため、銀河の姿はまだ完全には崩壊していない。

今回の分析ではさらに、銀河の衝突に由来する可能性がある第7の天体グループも検出されている。ガイアのデータはこれからも新たな公開が予定されていて、天の川銀河の成長の歴史がさらに詳しく解明されそうだ。

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