天の川銀河の歪みの原因は矮小銀河の衝突かもしれない

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位置天文衛星「ガイア」のデータ解析から、天の川銀河の円盤に見られる歪みは、過去に矮小銀河と衝突した痕跡である可能性が示された。

【2020年3月9日 ヨーロッパ宇宙機関

私たちの天の川銀河は円盤状の棒渦巻銀河だが、その銀河円盤は完全に平らではなく、片側がやや上に反り返り、もう一方の側はやや下向きに反り返るという歪み(warp)を持っていることが1950年代から知られている。また、この歪みの位置は、回転するコマの首振り運動のような「歳差運動」と呼ばれる動きによって、円盤の中を徐々に移動していることがわかっている。

天の川銀河の歪みの原因については、これまでに様々な理論が提案され、議論が続いている。たとえば、銀河間の磁場によって引き起こされているという説や、天の川銀河を包み込むように存在するハローのダークマター(暗黒物質)が不均一な分布をしているために、その重力の影響で銀河円盤が曲げられるという説などだ。

天の川銀河の構造
横から見た天の川銀河のイラスト。銀河の中心部にはバルジと呼ばれる膨らみがあり、太陽は銀河中心から約2万6000光年の距離にある。銀河の外縁部には、星の分布が上下にやや反り返っている歪みが見られる。今回の研究では、銀河中心から約5万2000光年までの範囲にある太陽周辺の星々の運動データが主に使われた。右上は天の川銀河を真上から見た図(提供:Stefan Payne-Wardenaar; Inset: NASA/JPL-Caltech; Layout: ESA)

伊・トリノ天文台のEloisa Poggioさんたちの研究チームは、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」が観測した天の川銀河の星のデータに着目した。2018年に公開されたガイアの第2期データ(Gaia Data Release 2; DR2)には17億個以上の星の位置や運動の情報が含まれている。研究チームではその中から約1200万個の巨星をピックアップし、これらの巨星の動きから、円盤の歪みの歳差運動を詳しく解析した。

その結果、歪みの位置が歳差運動で銀河円盤の中を一周するのにかかる時間は約6億~7億年であることが明らかになった。これは太陽が天の川銀河の中を公転する時間(約2億2000万年)より3倍ほど長いが、円盤の歪みが銀河間磁場で生じるという説やダークマターハローの不均一な重力で引き起こされるという説から予想される速度と比べると、はるかに速いものだった。

このことから研究チームでは、銀河円盤の歪みはもっと強力な作用、たとえば天の川銀河に他の銀河が衝突するといった現象が原因で生じたと考えている。

天の川銀河の周囲にはたくさんの小さな銀河が周回していて、過去に天の川銀河と衝突を起こしたと推定されているものもあるが、今のところ、いつ、どの銀河が衝突して天の川銀河の歪みが作られたのかはまだわからない。

その候補の一つと考えられているのは「いて座矮小銀河」だ。2018年に発表された別の研究では、やはりガイアDR2のデータの分析から、いて座矮小銀河が過去に天の川銀河の円盤を何度か突き抜けたことがあり、徐々に天の川銀河と合体しつつある途中の段階にあるらしいことが示されている(参照:「数百万個の星の動きに残る天の川銀河の過去」)。

いて座矮小銀河の位置
ガイアDR2の観測データから描いた天の川銀河。中央の赤色の楕円の位置に、いて座矮小銀河が存在する(提供:ESA/Gaia/DPAC, CC BY-SA 3.0 IGO)

2013年に打ち上げられたガイアは現在も観測を続けており、今年中に第3期、2021年後半には第4期のデータ公開が予定されている。これらのデータによって、天の川銀河のさらなる謎が解かれることを世界中の研究者が期待している。