双子の赤ちゃん星を育むガスの渦巻き
【2014年12月4日 アルマ望遠鏡】
台湾中央研究院天文及天文物理研究所の高桑繁久さんらが、おうし座方向460光年彼方にある生まれたばかりの双子星(原始連星)「L1551 NE」をアルマ望遠鏡で観測し、2つの星を取り囲むガスの円盤(周連星円盤)を発見した。
一酸化炭素分子の放つ電波をもとに円盤のガスの動きを調べたところ、ケプラー回転(*1)よりも速い速度で動いている場所があることが明らかにされ、原始連星に向かって落下していくガスの動きも見つかった。このようなガスの運動が発見されたのは今回が初めてのことで、双子の赤ちゃん星がまさに成長していくようすを見ていることになる。
アルマ望遠鏡で観測した、L1551 NEを取り囲む円盤(左)。円盤の直径は、海王星軌道のおよそ10倍に相当する。右は「アテルイ」でシミュレーションした原始連星の周囲の円盤で、特徴がよく一致している。クリックでシミュレーション動画へ(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Takakuwa et al.)
研究ではさらに国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイ」を使って、この円盤に含まれるガスの分布や運動をシミュレーションした。その結果、2つの星それぞれから伸びる渦巻き腕が周連星円盤として見えているようすや、これらの腕の隙間を通ってガスが連星に向かって落ちていくようすが再現された。2本の腕に含まれる物質は周囲の物質よりもやや速い速度で回転しており、観測で得られた結果にも一致する。
回転の勢いがある周連星円盤の物質がどのようなしくみで連星に向かって落下していくのか、これまでははっきりわかっていなかった。シミュレーションと観測とを比較した今回の研究から、連星の公転が「回転の勢い」の大きい腕を作る一方で、腕の隙間では「回転の勢い」が小さくなり、円盤の物質が星に向かって落下することができるようになった、ということが示されている。
1: 「ケプラー回転」 一般に質量の大きな天体の周囲を回る物体は、天体の質量と物体が回る軌道の大きさで決まる速度で運動する。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡: 双子の赤ちゃん星を育むガスの渦巻き
- The Astrophysical Journal: Angular Momentum Exchange by Gravitational Torques and Infall in the Circumbinary Disk of the Protostellar System L1551 NE 論文
〈関連リンク〉
- アルマ望遠鏡: http://alma.mtk.nao.ac.jp/
- 星ナビ.com こだわり天文書評: 「ALMA電波望遠鏡」
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