若い星の周りで見つかった、衛星を作る周惑星円盤

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アルマ望遠鏡を使った観測で、若い星を巡る惑星を取り巻く「周惑星円盤」が初めてとらえられた。衛星系を作る元になる構造と考えられている。

【2019年7月18日 アルマ望遠鏡

米・ライス大学のAndrea Isellaさんたちの研究チームがアルマ望遠鏡を用いて、ケンタウルス座の方向約370光年の距離に位置する若い恒星「PDS 70」を観測した。PDS 70には木星のような巨大惑星が2つ存在しており、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡「VLT」によって直接撮像されている(参照:「原始惑星系円盤の隙間に2つの惑星を直接撮像」)。

アルマ望遠鏡による電波観測のデータと、VLTによる可視光線と赤外線の観測データを合わせた結果、2つの惑星のうち少なくとも外側の惑星の周りに、複数の衛星を生み出せるほどの質量を持つ塵円盤が存在していることが明らかになった。衛星系を生み出す元になる小さな円盤構造である「周惑星円盤」の存在は、これまで理論的には予測されてきたが、実際に観測されたのは初めてのことだ。可視光線、赤外線、電波という3つの異なる波長で惑星の姿がはっきりととらえられたのも、今回が初めてのことである。

PDS 70の擬似カラー合成画像
PDS 70の擬似カラー合成画像。アルマ望遠鏡がとらえた塵から放射されるミリ波・サブミリ波(電波)のデータを白色・べージュ色、VLTによる可視光線画像を水色、赤外線画像を赤色で表現(提供:ALMA (ESO/NOAJ/NRAO); A. Isella; ESO)

「『周惑星円盤』の決定的な証拠を初めて目にすることができました。現在の惑星形成理論の多くを裏付ける成果です。私たちの観測結果と他の高解像度の光学画像との比較から、小さな塵粒子の不可解な集合体が、実は惑星の周りの塵円盤であることがわかりました」(Isellaさん)。

外側の惑星「PDS 70 c」は中心星から約53億km(太陽から海王星までの距離と同程度)離れていて、質量は木星の1~10倍程度と推定されている。この位置は、アルマ望遠鏡のデータに見られる塵の集合体と同じ場所だ。赤外線と水素が出す光で非常に明るく輝いていることから、惑星はすでにほぼ出来上がっていて、惑星の表面に近くのガスを吸い寄せることで成長を終える段階にあるとみられている。「もし惑星の質量が木星の10倍もあったとしたら、その周りには惑星サイズの衛星が形成される可能性もじゅうぶんあり得るでしょう」(Isellaさん)。

もう一方の、主星に近い「PDS 70 b」は太陽から天王星までの距離(約30億km)と同じくらいの位置にあり、その後ろに塵の塊が尾のようにつながっている。「これが何であり、この惑星系にとって何を意味するのかは、まだわかっていません。私たちが唯一言える決定的なことは、この惑星が単独で存在しているのではないということだけです」(Isellaさん)。

系外惑星の観測では中心星の明るさの影響が非常に大きいが、中心星はミリ波やサブミリ波をほとんど放出しないため、アルマ望遠鏡による観測では中心星の明るさは問題にはならない。この点で、アルマ望遠鏡による観測は非常に重要な意味を持つ。「しばらく時間をおいて、もう一度この惑星系を観測すれば、惑星と塵の集合体の位置をより簡単に描き出せるのです。太陽系が形成され始めた段階での惑星の軌道の性質について、私たちに独自の知見を与えてくれるでしょう」(Isellaさん)。