跳ねるMINERVA-II1!リュウグウ表面を撮影
【2018年9月25日 JAXA】
「はやぶさ2」プロジェクトチームは、「はやぶさ2」から分離された小型探査機「MINERVA-II1」のローバー「Rover-1A」「同1B」が小惑星リュウグウの表面に着地したことを確認したと発表した。
また、分離されたローバーがリュウグウに向けて落下する途中で「はやぶさ2」とリュウグウの姿を撮影した画像や、リュウグウ表面をホップして移動しながら撮影した画像も公開された。
分離の2分後(9月21日13時08分ごろ)に、リュウグウに向けて落下する途中の「Rover-1A」が撮影した「はやぶさ2」(画面上)とリュウグウ(画面下)。ぶれているのはローバーが回転しながら落下していたためとみられる(提供:JAXA、以下同)
分離の1分後(9月21日13時07分ごろ)に、リュウグウに向けて落下する途中の「Rover-1B」が撮影したリュウグウ。画面左上は太陽光によるゴースト
9月22日11時44分ごろに「Rover-1A」が撮影したリュウグウ表面の風景。ホップしている最中に撮影されたとみられる。画面上は太陽光によるゴースト
これにより、「MINERVA-II1」の2機のローバーは「小惑星の表面に着陸して移動探査を行った世界初の探査機」となった。具体的には、以下の世界初の成果を達成したこととなる。
- 小惑星の表面に到達した世界初のローバー(移動探査ロボット)
- 小惑星の表面を自律的に移動した世界初のローバー
- 小惑星の表面で撮影を行った世界初の探査機
- 小惑星の表面で複数の探査機の同時動作に世界で初めて成功
「MINERVA-II1」はリュウグウの表面を完全自律判断で移動探査するローバーだ。写真撮影や表面温度の計測などを行うことができ、内部のモーターを回転させる反動でローバー自体がホップするしくみも備えている。リュウグウの表面は非常に重力が弱いため、1回のホップで最大15分間ほど空中をジャンプし、最大で15m程度移動することができる。
「MINERVA-II1」のイラスト。奥がRover-1A、手前がRover-1B
移動や写真撮影はローバーの自律判断で行われる。撮影画像や観測データはローバーのメモリに記録されてから「はやぶさ2」に送信されて蓄積され、定期的に地球に送られる。探査地点が夜を迎えるとローバーは活動を休止し、朝になって太陽光が当たり、バッテリーが充電されるとまた探査を行う、という動作を繰り返す設計になっている。
2005年に小惑星「イトカワ」に着陸した初代「はやぶさ」には、今回の小型機の前身となるローバー「MINERVA」が搭載されたが、分離後の速度がイトカワの脱出速度を上回ってしまったため、イトカワの表面には着地できなかった。今回の成功でプロジェクトチームは13年越しのリベンジを果たしたことになる。
初代「MINERVA」に続き、今回も「MINERVA-II1」の開発を担当した「はやぶさ2」プロジェクトの吉光徹雄さんは、「ローバから届いた画像を最初に見たときに、ブレ画像でがっかりしましたが、「はやぶさ2」探査機が写っていたので、ロボットに仕込んだ通り撮像できてよかったです。また、小惑星表面でのホップ中の画像が届いたときには、小天体での移動メカニズムの有効性を確認することができて、長年の研究成果が実を結んだことを実感しました」とコメントしている。
また、「はやぶさ2」プロジェクトマネージャーの津田雄一さんは、「世界初の小惑星表面での移動探査活動を実現できたことは、嬉しいの一言に尽きます。小天体上の表面移動という新たな宇宙探査の手段を手に入れたこと、その技術の実現に「はやぶさ2」が貢献できたことを誇りに思います」と述べている。
ローバーの分離成功を発表した9月21日の記者説明会で、同プロジェクト・スポークスパーソンで「MINERVA-II1」の開発メンバーでもある久保田孝さんは、「「MINERVA-II1」がリュウグウへの着地と画像撮影に成功した暁には2機のローバーに名前を付けたい」とコメントしていた。どのような名前になるか楽しみだ。
(文:中野太郎)
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