「はやぶさ2」、小型機「MINERVA-II1」の分離に成功
【2018年9月21日 JAXA】
「はやぶさ2」運用チームでは、9月20日13時22分(日本時間、以下同)から「MINERVA-II1」の2機の探査ローバー「Rover-1A」「同1B」を「はやぶさ2」から分離する運用を開始した。
「はやぶさ2」は同日14時26分に小惑星「リュウグウ」の上空20kmの「ホームポジション」から降下を開始し、9月21日13時06分に高度55mで「MINERVA-II1」の2機のローバーを正常に分離した。
「MINERVA-II1」分離の直前、9月21日13時01分ごろ「はやぶさ2」の光学航法広角カメラ(ONC-W1)で撮影されたリュウグウ。高度は約80m。中央やや左に「はやぶさ2」の影が映っている(提供:JAXA)
その後「はやぶさ2」は再び上昇し、現在はホームポジションに向かっている。
「MINERVA-II1」の2機のローバーは直径18cm、高さ7cm、重さ1.1kgの小型ロボット探査機だ。画像の撮影やリュウグウ表面での移動など、地上からの命令なしで、完全に自律的に動作する。
2機のローバーがリュウグウの表面に着地できたかどうかが確定するのは22日以降になる見込みだが、分離の直後から「はやぶさ2」とローバーとの通信は確立されており、ローバー表面の太陽電池が正常に機能していることや、機体が回転しながらリュウグウに向かって落下していったこと、ローバーに搭載されているカメラで撮影動作が行われたことを示すデータが確認されている。
事前の計算では、2機のローバーは分離の約30分後にはリュウグウの表面に接地し、何度かバウンドした後、分離の約1時間後までには静止すると予測されている。現在確認されているデータから、ローバーの太陽電池の起電力(電圧)が、分離の1〜1.5時間後に2機とも大きく低下したことが判明している。これは、ローバーの着地地点がリュウグウの自転で「夜」を迎えたと考えるとつじつまが合う。「はやぶさ2」プロジェクト・スポークスパーソンの久保田孝さんは、「この電圧低下がみられたことから、ローバーは予定通りにリュウグウ表面にいることが期待される」としている。
「はやぶさ2」管制室で、「MINERVA-II1」の分離信号を確認して安堵の表情を見せる津田雄一プロジェクトマネージャー(右)と久保田孝スポークスパーソン(左)(提供:ISAS、JAXA)
今日の降下中に「はやぶさ2」が撮影した画像や「MINERVA-II1」のデータ、撮影画像などは、「はやぶさ2」のデータレコーダーに蓄積されていて、「はやぶさ2」がホームポジションに戻り次第、地上にダウンロードする作業が行われる。もし「MINERVA-II1」が落下の途中やリュウグウの表面で画像を撮影できていれば、このタイミングで画像を目にすることができるだろう。
「はやぶさ2」プロジェクトマネージャーの津田雄一さんは、「今回の分離運用が成功したことは運用チームにとって非常に大きな一歩。今回得られたデータを分析して、『はやぶさ2』本体の着陸にも活かしたい」と述べている。
記者説明会の録画(提供:JAXA)
(文:中野太郎)
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