系外惑星を一度に44個発見
【2018年8月10日 東京大学大学院理学系研究科・理学部】
2009年に打ち上げられたNASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」は、星の前を天体が横切ることで起こる明るさの変化を観測して系外惑星を捜索する衛星である。はくちょう座とこと座の境界付近の領域にある大量の星の観測から、2000個以上の系外惑星と3000個近くの系外惑星候補を発見した。
ケプラーは姿勢制御装置の故障のため2013年に主要ミッションを終了したが、2014年からは太陽光圧を利用して姿勢制御を行い、別の空域を対象とした「K2ミッション」を実施してきた。このK2ミッションでも300個ほどの系外惑星の存在が確認されていたほか、多くの惑星候補も発見されている。これらの実証のためには、地上での高解像度観測などフォローアップ観測が不可欠だ。
東京大学のJohn H. Livingstonさんたちの国際研究チームは、K2ミッションの生データを解析し、恒星の明るさを精密に測定して有力な惑星候補を選び出した。さらに、米・キットピーク天文台の天体望遠鏡などを用いたフォローアップ観測で、72個の候補天体の撮像や分光を行った。
その結果、44個の天体が系外惑星であることが実証された。一度にこれだけ多数の系外惑星が発見されたのは、ケプラーの主要ミッションで1000個単位での発見があった例を除けば極めて珍しいこととなる。なお、残る28天体のうち27個も有望な惑星候補である(1個は偽惑星と判明している)。
44個の惑星の大きさと軌道の大きさの比較。左上は太陽系の惑星の大きさ、左下は水星の軌道の大きさを表す。惑星の色は表面の温度を表す(赤は溶岩、青は地球の表面程度)(提供:John Livingston)
今回の研究結果は、単に一度の発見数が多いことだけでなく、比較的明るい恒星を巡る小型惑星の発見数が増加したことも重要な成果だ。44個の惑星のうち18個は複数惑星系に属していること、4個は周期が1日未満という超短周期惑星であること、1個は赤色矮星を回る、金星より小さい惑星であること、などがわかっている。地球型岩石惑星の形成・進化を理解するうえで、今後の重要な観測ターゲットとなるだろう。
赤色矮星を周回する金星より小さい惑星の想像図(提供:R Hurt (IPAC)/JPL-Caltech/NASA)
〈参照〉
- 東京大学大学院理学系研究科・理学部:東京大学の大学院生が太陽系外惑星を一度に44個も発見
- The Astronomical Journal:44 Validated Planets from K2 Campaign 10 論文
〈関連リンク〉
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