ガイアで見つかった天の川銀河の大衝突の証拠

このエントリーをはてなブックマークに追加
位置天文衛星「ガイア」の恒星データから、約100億年前に天の川銀河と矮小銀河の衝突合体があった証拠が見つかった。天の川銀河で過去に起こった銀河衝突のうち最も大規模なものだと考えられる。

【2018年7月11日 フラットアイアン研究所

英・ケンブリッジ大学および米・フラットアイアン研究所のVasily Belokurovさんたちの研究チームが、天文衛星「ガイア」の恒星データを用いた研究により、およそ80〜100億年前に矮小銀河が天の川銀河に衝突した証拠を発見した。衝突した矮小銀河は短時間のうちにばらばらになり、その残骸が現在の天の川銀河の中に存在しているという。

「矮小銀河は衝突でばらばらになり、銀河に含まれていた星々は天の川銀河の中心まで近づく針のように細長い軌道を描くようになりました。これは、矮小銀河が非常に細長い楕円軌道で接近し、天の川銀河に衝突したという動かぬ証拠です」(Belokurovさん)。

相互作用する銀河
相互作用する銀河の例、おとめ座のNGC 5426(右上)とNGC 5427(中央)。天の川銀河と矮小銀河の衝突もこのような現象だったかもしれない(提供:V. Belokurov (Cambridge, UK); based on image by ESO/Juan Carlos Muñoz)

ガイアはヨーロッパ宇宙機関が運用する位置天文衛星で、天の川銀河に属する恒星の位置と速度をきわめて精密に測定・記録している。ガイアのおかげで研究者は、星々の位置と運動をこれまでにない精度で知ることができるようになっている。

研究チームでは、衝突した矮小銀河に由来する星々の軌道に「ガイア・ソーセージ」という名前を付け、この矮小銀河を「ソーセージ銀河」と呼んでいる。ガイアで得られた天の川銀河の星々の動きを動径方向と円運動方向の成分に分けてプロットしたところ、動径方向に大きな速度を持つ星の集団がソーセージ形の分布となって現れたからだ。

「矮小銀河が衝突して破壊されると、その星々は天の川銀河の中で非常に細長い軌道を描くようになります。このソーセージ形の分布は天の川銀河で起こった最後の大衝突の痕跡なのです」(ケンブリッジ大学 Wyn Evansさん)。

恒星の速度分布
ガイアで得られた700万個の恒星の速度分布。銀河円盤の星々は約200km/sで回転している(図の青い部分)。それとは別に、動径方向に大きな速度を持ち、円運動方向の速度はほとんど持たない星の集団がソーセージのような横長の楕円形に分布している(提供:V. Belokurov (Cambridge, UK) and Gaia/ESA)

天の川銀河では今でも、いて座矮小銀河などの小さな銀河との衝突合体が続いている。しかし、ソーセージ銀河はこうした矮小銀河よりずっと大きく、ガス・星・暗黒物質(ダークマター)を合わせた総質量は太陽質量の100億倍以上だったと考えられている。これは天の川銀河の質量の約10%に達する重さだ。

ソーセージ銀河の衝突によって、天の川銀河の円盤部は大きく膨らんだか、あるいは分裂して、再生するまでには長い時間がかかったかもしれない。衝突したソーセージ銀河の残骸は天の川銀河の内部にばらまかれ、銀河中心部のバルジと銀河を取り巻く恒星ハローになったと考えられる。こうした特徴は銀河衝突の数値シミュレーションでも再現されており、ソーセージ銀河に由来する星々は長く引き伸ばされた軌道を持ち、衝突後に天の川銀河の円盤が大きく厚く成長することでさらに細長く伸ばされるという結果が得られている。

さらに、このような銀河の再構築が起こった証拠は、矮小銀河から受け継いだ星々の軌道の大きさにも表れている。「ソーセージ銀河の星は細長い軌道で天の川銀河の中心を回りますが、軌道の遠点(銀河中心から最も遠い点)までの距離はどれもほぼ同じになっています」(英・ダラム大学 Alis Deasonさん)。

ソーセージ銀河からもたらされた星々がこのように同じ距離でUターンするために、天の川銀河のハローの密度は星々がUターンする点を境に大きく下がっているという。Deasonさんは星々の軌道がこのように揃うことを5年ほど前に予測していた。今回の研究では、どのようにして星々がこのような狭い範囲の軌道に落ち着くのかも説明されている。

研究チームでは、ソーセージ銀河によって天の川銀河に持ち込まれた球状星団を8個見つけるという成果も挙げている。小さな銀河はふつう球状星団を持っていないので、ソーセージ銀河は複数の球状星団を持つほど大きかったはずだ。「天の川銀河の歴史の中でこれまでたくさんの小さな衛星銀河が衝突合体してきましたが、この衝突が最も大規模なものだったはずです」(米・カーネギーメロン大学 Sergey Koposovさん)。

(文:中野太郎)

〈参照〉

〈関連リンク〉

関連記事