地球サイズの系外惑星の大気を初観測

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地球サイズの系外惑星の大気が初めてハッブル宇宙望遠鏡で観測され、ガス惑星のように水素を主成分とした大気ではないことが明らかになった。

【2016年7月25日 HubbleSite

TRAPPIST-1はみずがめ座の方向約40光年に位置する赤色矮星で、2015年にヨーロッパ南天天文台(ESO)のチリ・ラシーヤ観測所で3つの系外惑星が発見されている。

このうち2つの惑星の中心星からの距離は、太陽から地球までの距離の20分の1から100分の1ほどと極めて近いが、赤色矮星は太陽よりもずっと暗く低温の天体であることから、少なくともどちらかはハビタブルゾーンに位置しているのではないかと考えられている。

米・マサチューセッツ工科大学のJulien de Witさんたちの研究グループは今年5月4日、ハッブル宇宙望遠鏡を用いてこれら2つの惑星を観測した。この日は、地球から見て両惑星が中心星の前を通りすぎる「ダブル・トランジット」という現象を起こす2年に1度の機会だった。

TRAPPIST-1系のイラスト
中心星TRAPPIST-1の手前を2個の惑星が同時に通過している様子を表したイラスト(提供:Illustration Credit: NASA, ESA, and G. Bacon (STScI), Science Credit: NASA, ESA, and J. de Wit (MIT))

観測からは、両惑星の大気の詳しい組成まではわからなかったが、ガス惑星のように水素が大部分を占める大気ではないらしいことがわかった。「生命を窒息させるような厚い水素の層がないので、両惑星上に生命を育める環境が存在する可能性は高いです。水素が大量にあると、分厚い大気による温室効果のために生命が生き残れる余地はありません」(宇宙望遠鏡科学研究所 Nikole Lewisさん)。

NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)などによって将来行われる観測は、系外惑星の大気の全組成を決定したり、微生物存在の可能性を示すメタンや水蒸気、さらに二酸化炭素やオゾンなどを探したりするのに大いに役立つだろう。JWSTでは、系外惑星の温度や大気圧といった、生命存在の鍵となる要素の分析も行われる。

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