天の川銀河のバルジに存在する星の年齢分布

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天の川銀河の中心のバルジ部分に存在する星の大規模な年齢分布図が初めて作成され、銀河中心の複雑な構造は、約110億年前に始まり約40億年間続いた星形成によって形成されたことが示された。

【2018年4月10日 EWASS and NAM 2018

渦巻銀河である天の川銀河の中心には、直径数千光年の膨らんだ構造であるバルジが存在する。バルジには銀河全体の星の総質量の、約4分の1が含まれている。

これまでの研究で、バルジには2種類の星々が含まれていることが示されている。1つは金属量が少ない星々で、これらは球状に分布している。もう1つは金属量が多い星々で、その分布はX字形あるいはピーナッツの殻のような2つの膨らみを持つ、細長く伸びたくびれた棒状になっている。

バルジ内のピーナッツ型構造の想像図
天の川銀河のバルジ内の、ピーナッツ型構造の想像図(提供:ESO/NASA/JPL-Caltech/M. Kornmesser/R. Hurt)

これらの星々の年齢について、これまでの研究では相いれない複数の結果が出ていた。そこで、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のMarina Rejkubaさんたちの研究チームは、星の年齢分布図の作成を目指し、個々の星の色や明るさ、スペクトルデータの分析を行った。

Rejkubaさんらは、ESO・パラナル観測所にある可視光線・赤外線望遠鏡VISTAを使って行われた、天の川銀河の中心部を赤外線で観測するサーベイ「VVV(Vista Variables in the Via Lactea)」の観測データとシミュレーションデータを、ESOの超大型望遠鏡VLTに設置されている分光器「GIRAFFE/FLAMES」による分光サーベイで得られたバルジ内の約6000個の星の金属量の計測結果と比較した。天の川銀河のバルジの研究としては、これまでで最大の領域を調べた研究である。

「星の中心核で燃料となる水素を使い果たした段階というのは、星の年齢の良い指標となります。私たちは、その段階にちょうど達した星を探すため、星の色と明るさを分析しました。私たちが発見した内容は、天の川銀河のバルジは単に古いという考えとは一貫性がなく、約110億年前から始まって40億年ほど続いた星形成が必要なことが示されました。つまりバルジ内で最も若い星の年齢は少なく見積もっても70億歳で、これまでの研究から示唆されていた年齢より年老いていることがわかりました」(Rejkubaさん)。

「過去の研究では、棒状構造に分布する金属量の多い星は、最も若い星らしいことが示されていました。私たちが分析に使用したデータでは、個々の星が棒状構造と球状構造のどちらに属しているのかを区別することはできませんが、棒状構造は約70億年前までに形成され、その後はそこに大量のガスの流入や、そこでの星形成はなかったことが示されました」(チリ・宇宙物理学ミレニアム研究所 Francisco Surot Madridさん)。

研究チームでは、天の川銀河のバルジ全体における星形成の歴史を示すマップの作成を目指している。「最終的にできあがるマップから、バルジ全体にわたる星の年齢と金属量の関数として星形成率が示され、バルジ形成の完全な歴史を知るための重要な情報が得られるでしょう」(ESO Elena Valentiさん)。

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