13の宇宙機でコロナ質量放出を追跡

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2014年10月14日に発生した太陽のコロナ質量放出が、太陽観測衛星や惑星探査機など計13機の宇宙機によって追跡観測され、速度の変化などが調べられた。

【2017年8月17日 ヨーロッパ宇宙機関NASA

2014年10月14日、太陽でコロナ質量放出(CME)が起こり、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の「Proba-2」、ESAとNASAの「SOHO」、NASAの「SDO」という太陽観測衛星がこれを観測した。この3機の人工衛星は地球の近くにあり、CMEが広がっていく方向には位置していなかった。一方、NASAの太陽観測衛星「STEREO-A」は太陽を挟んで地球と反対、つまりCMEが広がっていく方向にあり、地球近くの衛星からは見えなかった太陽の反対側を画像に収めただけでなく、CMEが通り過ぎていく現場で情報を集めた。

コロナ質量放出
2014年10月14日の太陽。左からSDO、SOHO、STEREO-A、Proba-2による観測で、矢印の位置(SOHOでは特に明るい部分)でCMEが発生(STEREO-Aだけ右なのは、他の3機と衛星の位置が違うため)(提供:SDO/NASA; SOHO (ESA & NASA); NASA/Stereo; ESA/Royal Observatory of Belgium)

幸運なことに他の様々な探査機もCMEの進行方向に位置していたおかげで、このCMEは合計13機の人工衛星や探査機によって太陽系の広い範囲にわたって追跡されることになった。

CMEは発生から3日後に火星に到達し、ESAの「マーズ・エクスプレス」とNASAの「メイブン」「マーズ・オデッセイ」という3機の火星探査機、火星上で活動中のNASAの探査車「キュリオシティ」で観測された。その5日後にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)を観測中だったESAの探査機「ロゼッタ」で、さらに約3週間後に土星系を探査していた探査機「カッシーニ」でも、CMEをはっきりと検出した。ESAの金星探査機「ビーナス・エクスプレス」でもCME発生2日後にその影響が検出されている。

また3か月後には冥王星への旅の途中にあったNASAの探査機「ニューホライズンズ」で、17か月後にはNASAの探査機「ボイジャー2号」でも、このCMEの痕跡かもしれないデータがとらえられた。

CME発生時の宇宙機の位置
2014年10月14日の様々な宇宙機と惑星の位置。クリックで画像拡大(提供:ESA)

宇宙機の位置から考えて、CMEは少なくとも116度の角度に広がっていることがわかった。また、CMEの発生時の速度は最大で秒速約1000kmと推測されているが、3日後に火星まで届いたときには秒速647kmにまで急激に減速していた。その5日後にはロゼッタの位置で秒速550km、現象から1か月後には土星の距離で秒速450~500kmと緩やかに減速していたことも明らかになっている。

CMEが広がる様子を表した動画(提供:ESA)

さらに、CMEの磁場の変化や、CME通過時に銀河宇宙線の量が減少する様子が太陽からの距離によって異なることも観測されている。「太陽系の内から外まで、これほど広くにわたってCMEを観測できることはなかなかありません。正確なタイミングで現場での測定ができたので、現象についての理解が進み、結果をモデルにフィードバックできます」(ESA Olivier Witasseさん)。