系外惑星プロキシマケンタウリbの宇宙天気予報
【2017年4月7日 CfA】
地球から4.28光年(約40.5兆km)の距離にある「プロキシマケンタウリ」は、太陽系から最も近い恒星だ。2016年、この星の周りを11.3日周期で公転する惑星「プロキシマケンタウリb」(以降、プロキシマbと表記)が見つかった。つまりプロキシマbは、私たちから最も近いところにある系外惑星である。
プロキシマケンタウリb表面の想像図。明るく描かれているのが中心星のプロキシマケンタウリで、その右の2つの点はリギルケンタウルスA・B(リギルケンタウルスA・Bとプロキシマケンタウリは全体で連星系)(提供:ESO/M. Kornmesser)
中心星とプロキシマbとの距離(約700万km)は太陽から地球までの20分の1しかない。一方で中心星はM型矮星に分類される星であり、質量は太陽の10分の1、明るさは1000分の1しかない。そのため、この惑星系のハビタブルゾーン(惑星表面に水が液体の状態で存在できる領域)は中心星に近いところになり、プロキシマbもその領域に位置している。
最近の統計によれば、こうしたM型矮星の半分には、ハビタブルゾーンの近くに地球サイズの惑星が存在すると見積もられている。また、M型矮星は最もありふれたタイプの星だ。最も多いと考えられる系外惑星系の環境を理解するうえで、プロキシマケンタウリと惑星プロキシマbについて知ることは重要である。
ところで、プロキシマケンタウリのようなM型矮星からは、太陽よりもはるかに強烈な紫外線や極紫外線、X線が放射される。こうした放射によって、中心星の近くにある惑星の大気は蒸発してしまうだろう。また、星の強力な磁場活動によって引き起こされる恒星風やコロナ質量放出といった現象も惑星に甚大な被害をもたらす。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのCecilia Garraffoさんたちが行った研究により、プロキシマbが受ける恒星風の圧力は地球が受ける太陽風の圧力より1000倍から1万倍も強いことが示された。さらに、恒星風の圧力は極めて不均一であり、プロキシマbの大気は毎日3倍も縮んだり膨らんだりすることもわかった。そのうえ、プロキシマbの大気は超音速状態にあるらしい。
これらすべての現象が惑星大気にかなりマイナスの影響を与えていることだろう。「ハビタブル」という言葉の大元の意味は「生命が居住可能な」だが、プロキシマbをはじめM型矮星の周りの系外惑星の環境は、少なくとも私たちには「快適に暮らせる」ものではなさそうである。
〈参照〉
- CfA: The Space Weather Forecast for Proxima Cen B
- The Astrophysical Journal Letters: The Space Weather of Proxima Centauri b 論文
〈関連リンク〉
関連記事
- 2022/08/15 形成中の惑星を取り巻く円盤からガスを初検出
- 2022/08/02 すばる望遠鏡による低温の恒星を巡る惑星探し、最初の発見
- 2022/04/27 恒星に隠された系外惑星の光から大気の特性を解明
- 2022/04/08 太陽系と異なるプロセスで形成中の惑星
- 2022/04/05 すばる望遠鏡、暗い低温度星の化学組成を明らかに
- 2022/03/29 系外惑星が地球のような月を持てる条件
- 2022/01/06 星のゆりかごを撮影した画像から多数の浮遊惑星を発見
- 2021/12/10 液体の水が見つかる可能性のある系外惑星、太陽系の近くに発見
- 2021/11/25 塵粒から巨大ガス惑星まで、成長の道筋を解明
- 2021/11/18 移動する惑星が原始惑星系円盤にリングを作る可能性
- 2021/11/01 「銀河系外惑星」候補を初めて発見
- 2021/10/28 すばる望遠鏡、生まれたての系外惑星の姿をとらえる
- 2021/10/25 地球型惑星や水星型惑星の形成につながる中心星の組成
- 2021/09/30 小さな恒星の周りを1日未満で公転する地球型惑星
- 2021/09/03 遠い軌道を回る冷たい系外惑星は広範囲に存在
- 2021/07/08 アルマ望遠鏡が観測した、混沌とした惑星誕生現場の姿
- 2021/05/10 プロキシマケンタウリの巨大フレアを多波長で観測
- 2021/05/06 「ウルトラホットジュピター」でOH分子を発見
- 2021/03/12 26光年の近距離に2つの手法で検出された地球型惑星
- 2021/02/24 3連星の中で逆回転する惑星たち