世界初、天の川銀河中心の低エネルギーガンマ線放射を直接撮像

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大気球実験で得られた低エネルギーガンマ線の観測データを、世界で初めて線形画像解析することで、天の川銀河中心の陽電子消滅ガンマ線スペクトルが高精度で求められた。

【2026年10月15日 産業技術総合研究所/北里大学】

100万電子ボルト(1MeV)以下の低エネルギーガンマ線は、超新星爆発による元素生成や宇宙線の加速、ダークマター(暗黒物質)との関連も指摘される陽電子の消滅など、宇宙の進化を理解するうえで重要な情報を運ぶ。しかし、MeVエネルギー領域では精度の高い撮像法がなく、背景放射の影響が大きいこともあり、天体を直接撮像することが困難だった。そのため、これまでの研究では、限られた観測データから複雑なモデルを用いて放射源を推定するにとどまっていた。

産業技術総合研究所の池田智法さん、北里大学の谷森達さんを中心とする研究チームは、2018年に実施された大気球実験「SMILE-2+」で電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)が取得したデータを解析し、天の川銀河の中心領域における150~600keV(15万~60万電子ボルト)のガンマ線を、世界で初めて幾何光学に基づくイメージング分光法でとらえることに成功した。

2018年に実施された大気球実験「SMILE-2+」
2018年に実施されたSMILE-2+実験の様子。(左上)大気球頭部にガスが封入され、放球を待つSMILE-2+ゴンドラと大気球。(右)放球直後の様子。(右上)地上から撮影された、水平浮遊中(高度約38km)のSMILE-2+。(下段左)電子飛跡検出型コンプトンカメラの構成図。(下段中)SMILE-2+ゴンドラ内部の装置。(下段右)SMILE-2+ゴンドラの外観(提供:JAXA宇宙科学研究所)

ETCCはMeVガンマ線の線形撮像(複数の対象物を個別に撮影しても同時に撮影しても、それぞれの対象物の形や明るさなどの特性が変化しない手法)が可能な世界初のカメラであり、従来の解析手法に頼らず雑音を劇的に排除して、高感度な天体撮像ができる。また、イメージング分光法では、対象物を直接画像としてとらえながら、同時にエネルギーごとの成分(スペクトル)や空間分布を高精度に解析することができる。

従来の撮像法であるコンプトンカメラの画像とETCCの点線源の画像
(左)代表的な従来の撮像法であるコンプトンカメラの画像。ガンマ線の到来方向が円環状に制限されるため、点線源も広がって写る。(右)ETCCで撮像した点線源の画像。ガンマ線の到来方向が画像上の点として得られるため、点線源は一点に集中し、光学レンズによる撮像と同様の線形画像が得られる(提供:(左)Y. Mizumura, et al., J. Instrum., 9, C05045より引用、(右)プレスリリース)

SMILE-2+の観測データからは、2022年にも天の川銀河中心方向やかに星雲などからのガンマ線の検出が報告されていた。今回、研究チームは線形撮像の特長を生かしてさらに解析を進め、天の川銀河中心の空間分布や強度を評価した。その結果、陽電子消滅に由来する銀河中心からのガンマ線放射は、従来の観測結果より約2倍高い強度を示した。この値は従来結果の誤差範囲内ではあるものの、天の川銀河中心のガンマ線放射が比較的強い可能性を示唆するもので、その起源をより高精度な観測によって検証する必要性を改めて提示している。

研究チームは現在、感度を改善したETCCを用いた天の川銀河観測実験「SMILE-3」の準備を進めている。SMILE-3に続いて、より大型・高感度のETCCによる長時間の気球観測や衛星観測が実現すれば、天の川銀河の中心だけでなく、超新星残骸や活動銀河核、ガンマ線バーストなどの詳細なMeVガンマ線画像を取得できるようになるだろう。線形撮像による天体MeVガンマ線観測の発展は、反物質の起源や重元素生成、宇宙線加速機構といった天文学上の課題の理解に大きく貢献することが期待される。

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