秋の食変光星、アルゴルとカシオペヤ座RZが見ごろ
【2023年10月11日 高橋進さん】
ペルセウス座のアルゴルは古代アラビアのころから「ラス・アルグル(悪魔の頭)」と呼ばれていた星で、当時から明るさを変えることが知られていたのかもしれません。変光が実際に科学的に確認されたのは、1667年のモンタナリ(イタリア)の観測によってでした。当時はとても規則的に明るさを変える星だとしか知られていませんでしたが、変光の原因が「連星系の食による」ことを突き止めたのはイギリスのジョン・グッドリックでした。
今日ではアルゴルは、主星(アルゴルA)は直径が太陽の2.7倍の星で、その周りを直径が太陽の3.5倍の星(アルゴルB)が2.867日(2日20時間49分)で公転する連星系であることがわかっています(もう1つ、アルゴルCもあります)。AとBが地球から見て横並びの時には2.1等で明るく、BがAの手前にあるときにはAが隠れてしまうので3.4等にまで減光します。
(1枚目)アルゴルの模式図(作図:高橋さん)、(2枚目)アルゴルの光度曲線(2017年11月19-20日の金井清高さんの観測データから高橋さん作成)。それぞれ画像クリックで表示拡大
アルゴルの観測は肉眼で5分おきに見ていくだけで可能です。平常光度の2.1等から極小の3.4等まで暗くなるのには約5時間かかり、その後再び5時間かけて2.1等に戻ります。全部だとおよそ10時間にもわたる現象で、さすがにこれを全部観測するのは大変ですので、とりあえず極小予報時刻の前後1~2時間を観測してみることをぜひおすすめします。周囲の星の明るさと見比べながらぜひ観測してみてください。
アルゴル周辺の星図。数字は恒星の等級(38=3.8等)を表す。画像クリックで表示拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)
もう一つの秋の代表的な食変光星はカシオペヤ座RZ(RZ Cas)です。この星は周期1.1953日(1日4時間41分)で平常光度の6.2等から7.7等にまで減光します。観測には双眼鏡が必要ですが、平常光度から極小まで2時間ほどです。増減光の速度はアルゴルの3倍近くもありますので、その分だけカシオペヤ座RZの方が観測しやすいとも言えます。
(1枚目)カシオペヤ座RZの模式図(作図:高橋さん)、(2枚目)カシオペヤ座RZの光度曲線(2022年11月2日の前原裕之さんの観測データから高橋さん作成)。それぞれ画像クリックで表示拡大
夜が長くなって変光星観測もしやすい季節になりました。この機会にぜひ、食変光星観測にチャレンジしてみてください。
カシオペヤ座RZ周辺の星図。画像クリックで表示拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)
〈関連リンク〉
- 日本変光星研究会
- VSOLJ Variable Star Bulletin
- アメリカ変光星観測者協会
- アストロアーツ:
- 星ナビ.com:2023年11月号 Observer's NAVI「秋の食変光星を観測しよう」
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