まもなく極大を迎える見やすい変光星、わし座R
【2023年9月28日 高橋進さん】
およそ1年前後の周期で明るさを変化させるミラ型変光星は観測しやすく、変光星観測者に人気のターゲットです。その中でもとくに夏のおすすめの星といえるわし座R(R Aql)は、およそ270日の周期で、6等級から11等級まで明るさを変えていきます。
ミラ型変光星のなかには極大等級がその時々で大きく変わる星や、増光期に一時的に増光がストップして段を作る星、明るくなっていく時は急速だが暗くなる時はゆっくりという星など、いろいろな特徴があります。今回ご紹介するわし座Rは、減光していく時に比べるとほんの少し増光期のほうが角度が急ですが、ほぼ対称的な光度変化で増減光します。
また、今年の6月の記事「夜明け前のミラを観測しよう」のなかでうみへび座Rの変光周期の変化について紹介しましたが、わし座Rにも似た変化が見られます。1950年ごろは周期300日くらいでしたが、最近は270日くらいで、2年で1日くらいずつ周期が短くなっているようです。うみへび座Rと同様に恒星内部でヘリウム燃焼を起こし、一時的に膨らんだ後に、ゆっくりと恒星が縮小しつつある段階と考えられます。
わし座Rの変光周期の変化(VSOLJおよびAAVSOのデータから高橋さん作成)
わし座Rの今年の極大予報は10月初旬です。9月18日の明るさはおよそ6.5等で、現在はゆっくりと増光を続けています。このまま行けば今年はおよそ6等の平均的な極大かと思われます。
わし座Rの光度(2022~2023年)(VSOLJのデータから高橋さん作成)
多くの皆さんによる極大の観測は、周期の変化を知る上でも大変に意味のある観測です。この機会にぜひ観測をお願いします。わし座Rの南西にある有名な二重星のへび座θも小望遠鏡で楽しめますので、あわせてご覧ください。
わし座R周辺の星図。数字は恒星の等級(63=6.3等)を表す(「ステラナビゲータ」で星図作成、比較星光度はAAVSOによる)
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