天の川銀河の円盤の外縁部に予想外の構造
【2021年12月23日 カブリIPMU】
天の川銀河はこれまでに、いくつもの衛星銀河を取り込むことで成長してきた。天の川銀河の外縁部には、細長く伸びたフィラメント状に恒星が分布している構造が見られるが、これは衛星銀河との衝突合体の際に潮汐作用によって生じた「潮汐腕」の痕跡だと予測されている。
たとえば、過去に天の川銀河に衝突したとされるいて座矮小銀河は、いて座ストリームと呼ばれるフィラメント構造を作った。また、太陽系から見て天の川銀河の中心と反対の方向に存在する「反中心ストリーム(Anticenter stream)」と呼ばれる構造には、約80億年以上前の星が多く含まれているが、これもかつて起こった衛星銀河との衝突が起源と考えられる。反中心ストリームを作った衛星銀河の残骸は見つかっていて、ガイア・ソーセージと呼ばれている。
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)のChervin Laporteさん(現・スペイン・バルセロナ大学宇宙科学研究所)が率いる研究チームは、そうしたフィラメント構造が他にも存在することを明らかにした。研究チームが発表した論文には、5つの新たな構造が記載されている。
この発見は、天の川銀河の3次元地図作成を目的として観測を続けているヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」の観測データを解析し、天の川銀河の円盤外縁部の新しい地図を作成したことによる産物だ。天の川銀河の円盤には多数の塵が含まれ、この塵による減光を大きく受けるため、円盤部の恒星はこれまでほとんど調べられていなかった。それに対して研究チームは、減光されていても測定できる恒星の移動速度に注目することで、今まで見えなかった構造を浮かび上がらせている。
Laporteさんたちはいくつものフィラメント構造を発見したが、その全てが衛星銀河との間に起こった潮汐作用で作られたかは不明だ。天の川銀河の円盤に垂直方向に現れる密度波という波でこうした構造が作られた可能性も指摘されている。
研究チームはフィラメント構造をさらに研究するため、各構造における恒星集団の類似している点や違いについて調査を始めている。今後は恒星の視線方向の速度や化学組成、恒星年齢などの情報を入手し、こうした構造に含まれる恒星の起源や構造自体の成り立ちについて明らかにしていく予定だ。
〈参照〉
- カブリIPMU:天の川銀河の円盤の外縁部に予想外の構造を発見
- MNRAS:Kinematics beats dust: unveiling nested substructure in the perturbed outer disc of the Milky Way 論文
〈関連リンク〉
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