水星の大きな核は原始太陽の磁場が作ったのかもしれない

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太陽系の内側にある岩石惑星ほど密度が大きいのは、原始太陽の磁場の働きによるものだという説が提案された。水星表面の最新の観測ともよく合うモデルだという。

【2021年7月12日 東北大学

太陽系で内側の軌道を回る水星・金星・地球・火星は、岩石が主成分である「岩石惑星」で、その内部は核・マントル・地殻の3層からできている。中心の核は鉄やニッケルなどの金属でできていて、マントルと地殻はケイ酸塩などの酸化物からなる。

水星の内部構造
水星の内部構造のイラスト。中心に固体の内核、その外に液体の外核があり、さらに外側にマントルと地殻がある。水星は地球などに比べて金属核の割合が非常に大きい(提供:NASA's Goddard Space Flight Center

4つの岩石惑星の非圧縮密度(天体の質量を体積で割った平均密度ではなく、天体自身の重力で内部物質が圧縮される効果を除いた密度)を比べると、水星は約5.2g/cm3と特に高く、地球は約4.2g/cm3ほどで、火星は3.8g/cm3と低い。金属は酸化物よりも密度が高いので、非圧縮密度が高い惑星ほど金属核の割合が大きいことになる。また、小惑星は岩石惑星の物質よりもさらに密度が低く、少量の金属しか含まないことが知られている。しかし、岩石天体の間にこうした密度の差がなぜ生じたのかはよくわかっていなかった。

とくに、水星がこれほど非圧縮密度が高い理由については、過去に天体が水星に衝突して表面の岩石層が剥ぎ取られたせいだという説が長く支持されてきた。しかし、2010年代にNASAの探査機「メッセンジャー」が水星を観測したデータによると、水星表面の岩石はカリウムや塩素など揮発性の高い元素を多く含んでいる。こうした揮発性の元素は、もし過去に大規模な天体衝突があったとすると衝突時にほとんど失われてしまうはずだ。そのため、太古の水星が大規模な天体衝突を経験したという説は見直しが必要だとも考えられている。

東北大学大学院および米・メリーランド大学カレッジパーク校のWilliam F. McDonoughさんと吉崎昂さんの研究チームは、過去の惑星探査機のデータなどから太陽系の岩石天体の組成を推定し、太陽から遠い岩石天体ほど、その組成に占める金属の割合が小さいことを発見した。

約46億年前に誕生した直後の太陽系では、原始太陽で発生した強い磁場が原始惑星系円盤の中に存在したと考えられている。そのため、円盤の中で塵が集まって微惑星ができるときには、太陽に近く磁場が強い場所ほど金属元素が天体に取り込まれやすかった、とも推定される。

これらのことから、McDonoughさんたちは、太陽に近い岩石天体ほど非圧縮密度が大きい(=金属核の割合が大きい)という関係は、太陽系誕生直後の太陽の磁場が生み出したものだという説を提案した。この説なら、水星の密度が高い理由として過去に天体衝突があったと仮定する必要がなくなり、「メッセンジャー」の観測結果ともつじつまが合う。さらに、岩石惑星以上に小惑星の密度が小さいという傾向もうまく説明できる。

太陽系内の岩石惑星と小惑星の密度と太陽からの距離の関係
太陽系の岩石惑星と小惑星(青)、隕石(灰色)の非圧縮密度と太陽からの距離の関係。隕石については母天体の距離を横軸にとっている。色付きの帯は岩石天体の主な構成物質(上から、鉄・ケイ酸マグネシウム・フィロケイ酸塩・水氷)の非圧縮密度を示したもの(提供:McDonough & Yoshizaki (2021) より)

岩石天体に金属核が存在することは、その天体が生命の存在に適した環境になるかどうかにも関わる重要な特徴だ。地球には金属核があるおかげで磁場が発生し、この磁場が有害な宇宙線から地球表面を守る「バリア」となることで生物や人類が生存できている。天体磁場が発生して長期間保たれるためには、金属核の大きさや化学組成が重要で、岩石天体にどんな金属核ができるかを知ることは、その天体が生命に適した環境になる条件を決めることにもつながる。

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