観測史上最古の渦巻き構造を持つ銀河

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アルマ望遠鏡の観測データの中から、約124億前の宇宙に渦巻き構造を持つ銀河が見つかった。これまで知られていた最古の渦巻銀河よりもさらに古い。

【2021年5月31日 アルマ望遠鏡

宇宙が誕生してから最初に誕生した銀河は小さく、それが合体を繰り返すことで成長し、渦巻きなどの構造を発達させたと考えられている。私たちが存在する天の川銀河も恒星や星間物質が渦巻き模様の薄い円盤状に分布する渦巻銀河だが、現在の宇宙ではこのような渦巻銀河が占める割合は70%にも達する。

天の川銀河
天の川銀河の構造の模式図。中心部に星が集まったバルジがあり、その外側に渦巻き構造がある(提供:加藤恒彦、4D2U Project、NAOJ、ALMA (ESO/NAOJ/NARO))

一方、100億光年以上離れている、つまり100億年以上前の宇宙では莫大な数の銀河が見つかっているが、渦巻銀河は数個しかない。その中で最古のものは、約114億年前のものだった。

総合研究大学院大学物理科学研究科の津久井崇史さんと国立天文台/総合研究大学院大学の井口聖さんは、アルマ望遠鏡のデータアーカイブから、約124億年前の宇宙で見つかった銀河に注目した。おとめ座に存在する「BRI 1335-0417」と呼ばれるこの銀河は赤外線で極めて明るく輝いており、特に遠赤外線領域での明るさは太陽の10兆倍もある。これは銀河内で活発に星が形成されていて、その光が星間の塵を温め、赤外線を放射させているからだと考えられる。

アルマ望遠鏡でとらえられた、星の材料となるガスに含まれる炭素イオンが放つ電波のデータからは、コンパクトで明るい中心部と、その両側に2本の腕を持つ渦巻き模様のような構造が見出された。また、電波のドップラー効果をもとにして銀河のガスの動きを分析した結果、天の川銀河のような渦巻銀河で見られるガスの動きのパターンとよく一致していることが明らかになった。

銀河「BRI 1335-0417」
BRI 1335-0417。中心部の明るい部分の上下に渦巻き構造が見える(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T. Tsukui & S. Iguchi)

BRI 1335-0417の渦巻き構造は、中心から少なくともおよそ1万5000光年の距離まで広がっていた。半径約5万光年の天の川銀河と比べると3分の1ほどだ。また、ガスの動きから推測されたBRI 1335-0417の質量は、太陽の600億倍程度と見積もられた。これは、天の川銀河に存在する星と星間物質の総質量に匹敵する。「宇宙初期に存在した銀河としては、BRI 1335-0417はとても巨大な銀河と言えるでしょう」(津久井さん)。

宇宙誕生後14億年という比較的短い時間でBRI 1335-0417の渦巻き構造がどのようにしてできたのかは、大きな謎だ。星形成が活発であることは、この銀河が別の銀河と衝突したことを示唆している。しかし、衝突した銀河が大きければ、円盤の構造は大きくかき乱されるはずだ。津久井さんたちは銀河のガスの動きと合わせて考え、小さな銀河との衝突によってガスが流れ込んでいると考えている。

BRI 1335-0417のような太古の宇宙に存在する銀河は、巨大楕円銀河の祖先と考えられている。今後BRI 1335-0417は円盤型から楕円形へと姿を変えていくのかもしないが、ひょっとするとこのまま渦巻き構造を持つ銀河であり続けるのかもしれない。宇宙の歴史の中でどのように銀河の形が変遷していくかを調べるうえで、BRI 1335-0417は重要な役割を果たしそうだ。

スーパーコンピュータによる渦巻銀河形成のシミュレーション(今回の研究を再現するために行われたものではない)。およそ135億年の間に小さな銀河が次々と合体し、ひとつの巨大な渦巻銀河に成長する様子(提供:武田隆顕、額谷宙彦、斎藤貴之、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト)

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