記録的に重元素が少ない球状星団

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水素とヘリウム以外の重元素が異常に少ない球状星団が、アンドロメダ座大銀河の周縁で見つかった。宇宙初期の恒星や銀河の形成に関する理論に疑問を投げかける結果だ。

【2020年10月21日 ケック天文台

ビッグバン直後の宇宙に存在した元素のほとんどは水素とヘリウムで、それ以外の「重元素」は後に恒星の核融合反応などによって生成された。つまり、ある天体に重元素がほとんど含まれないのであれば、その天体は宇宙がまだ若かったときに誕生したのだと推測できる。だが、水素とヘリウムしかなかった時代の宇宙では、ガスはあまりまとまってなかったと考えられているため、質量の大きな天体を作るのは難しかったはずだ。

アンドロメダ座大銀河(M31)の外縁部に位置する球状星団「RBC EXT8」は、まさにそうした「宇宙初期で作られるはずのない」サイズの天体である。そのRBC EXT8にあるはずの重元素が、極めて欠乏していることが判明した。

「このような注目すべき星団が私たちの目と鼻の先でほったらかされていたことに驚きました。この星団はアンドロメダ座大銀河に属する星団の中でも最も明るい部類に入り、数十年前から知られていましたが、詳細に調べられたことがなかったのです」(米・サンノゼ州立大学 Aaron Romanowskyさん)。

球状星団RBC EXT8
アンドロメダ座大銀河(右)の外縁部、画像の中央に球状星団RBC EXT8がある。左はその拡大画像(提供:ESASky/CFHT)

2019年10月にオランダ・ラドバウド大学のSøren Larsenさんたちの研究チームは、ハワイ・マウナケア山頂のケック天文台に搭載されている高解像度エシェル分光器(HIRES)を使って、RBC EXT8のスペクトルから鉄とマグネシウムの痕跡を調べた。

その結果、RBC EXT8を構成する星々に含まれる鉄の量が、平均して太陽の約800分の1しかないことが判明した。これまで知られていた中で最も鉄が少なかった球状星団と比べても、3分の1しかない。また、マグネシウムも極端に欠乏していた。

さらに研究チームはカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)のアーカイブ画像から星団の大きさと質量も調べ、RBC EXT8が太陽およそ100万個分の質量をもつ、球状星団の中でも大きな部類の天体であることが確認された。

RBC EXT8のように重元素が極端に少ない大質量の球状星団は、宇宙初期には大きな天体を形成するほどのガスのまとまりがなかったという現行の考え方に疑問を投げかけるものだ。

「球状星団には必ず一定量以上の重元素が含まれているという理解が、これらの非常に古い星団が初期宇宙でどのように形成されたという私たちの考え方の多くを支えていました。今回の発見はその標準的なモデルと矛盾しますが、それはいつだって楽しいことなんです!」(豪・スウィンバーン工科大学 Jean Brodieさん)。

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