水星探査機「ベピコロンボ」、地球スイングバイを無事に完了
【2020年4月13日 ヨーロッパ宇宙機関/宇宙科学研究所】
「ベピコロンボ」は2018年10月20日に打ち上げられた水星探査機で、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)と日本のJAXAの共同ミッションとなっている。水星磁気圏探査機「みお(MMO)」と水星表面探査機「MPO」、そしてこの2機の探査機をまとめて水星まで送り届ける電気推進モジュール(MTM)からなり、JAXAが「みお」を、ESAがMPOとMTMの開発を担当した。
最終的にベピコロンボが水星周回軌道に入るのは2025年12月5日の予定だ。打ち上げから7年の飛行中に地球・金星・水星で計9回のスイングバイを行う。これほど長い旅になる理由は、水星にたどり着くために探査機を大きく減速する必要があるためだ。
水星は太陽に非常に近いため、地球から水星へ向かうためには太陽が作る「すり鉢」状の重力場を底へ向かって下っていかなければならないが、ただ下ったのでは水星を猛スピードで通過するだけになってしまう。そのため、太陽の周りを公転しながら各惑星で何度も「減速スイングバイ」を行い、探査機に少しずつブレーキをかけて重力場の「すり鉢」をらせん状に下りながら水星に到着するのだ。その最初となる地球スイングバイが4月10日に行われた。
スイングバイの間は地球の重力に従って飛ぶ慣性飛行となるため、特に飛行制御などは行わないが、地球最接近直後の午前5時01分~5時35分(世界時、以下同)の間はベピコロンボが地球の影の中を通過するため、太陽電池パネルでの発電ができなくなり、機体の温度も低下する。そのため、事前に探査機のバッテリーがフル充電され、すべての機器を保温する措置が取られた。
「この『食』の時間帯はスイングバイで最も慎重を要するところです。打ち上げ後初めて『ベピコロンボ』が地球の影を通過し、太陽光を全く受けない状況になります」(ESA ベピコロンボ探査機運用マネージャ Elsa Montagnonさん)。
ベピコロンボは予定通りに飛行し、午前4時25分に地球表面から12,700kmの位置を通過した。運用チームは探査機の太陽電池が再び発電を開始したことを無事に確認した。
今回のスイングバイ運用は何年も前から計画されたもので、延期が許されないスケジュールだったが、新型コロナウイルスの流行を受けて、ESAではミッションコントロールセンターに配置する人員の数を制限せざるをえなかった。こうした制約がありながらも、スイングバイは予定通り成功した。
スイングバイ終了後、MPOと「みお」のいくつかの観測機器の電源が投入された。これから、スイングバイの最中に撮影された月の画像や地球磁場の観測データなどがダウンロードされ、機器の較正などが行われることになっている。
オランダの自宅からテレワークで今回の地球スイングバイを見守ったESAのベピコロンボ・プロジェクトサイエンティストのJohannes Benkhoffさんは、「今日の運用は(新型コロナウイルスの影響で)数か月前に想像したのとはかなり違った形で行われることになりましたが、スイングバイがうまくいき、いくつかの観測機器も運用できたことをみな嬉しく思っています。観測データを受信・解析するのが楽しみです。今回のデータは10月に予定されている次の金星スイングバイでも役に立つでしょう」と語った。
また、JAXAのベピコロンボ・プロジェクトサイエンティストの村上豪さんも、「日本ではベピコロンボ・ミッションに大きな関心が寄せられています。スイングバイ成功の後、金星・水星で行われる科学観測も楽しみです」とコメントしている。
(文:中野太郎)
〈参照〉
- ESA:BepiColombo takes last snaps of Earth en route to Mercury
- ISAS:BepiColombo探査機、地球スイングバイを実施 ~最初で最後の地球接近、みおをみおくろう~
〈関連リンク〉
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