天の川銀河のハローに潜む想像以上に高温のガス
【2020年1月23日 ヨーロッパ宇宙機関】
銀河の周囲には、星やガス、ダークマターで構成されている巨大な球状構造「ハロー」が存在している。ハローは銀河と銀河間空間とをつないでおり、銀河の進化に重要な役割を果たしていると考えられている。
これまで、銀河のハロー内には、銀河の質量によって決まる温度が単一の高温ガスが含まれていると考えられてきた。しかし、米・オハイオ州立大学のSanskriti Dasさんたちの研究チームが行った、ヨーロッパ宇宙機関のX線観測衛星「XMMニュートン」による観測から、天の川銀河のハローが、温度の異なる3種類のガス成分で構成されていることが明らかになった。そのうち最も高温のガスは、これまで考えられてきたよりも10倍も温度が高い。ハローが温度の異なるガスで構成されていることが明らかになったのは、天の川銀河以外の銀河を含めて、初めてのことだ。
「ハローのガスの温度は1万~100万度の範囲と考えられてきましたが、天の川銀河のハロー内のガスの中には1000万度に達するものもあることが明らかになりました。どのようにしてハロー内のガスがこれほどの高温になったのかはわかっていませんが、天の川銀河の円盤構造から吹く風によるものかもしれません」(Dasさん)。
今回の研究でDasさんたちは、非常に活動が活発で強力なエネルギーを持つ遠方銀河の中心核である「ブレーザー」からの光を利用した。50億光年彼方のブレーザーから届いたX線が天の川銀河のハローを通過すると、そのX線中にハロー内のガスの特徴に関する情報が含まれる。「ブレーザーの光を分析し、特定の温度にしか見られない特徴をもとにしてガスの温度を決定することができました」(オハイオ州立大学 Smita Mathurさん)。
また、天の川銀河のハローに含まれる元素の比率は太陽の元素比と似ていると考えられてきたが、今回の研究により予想よりも鉄や酸素が少ないことが示された。「実にエキサイティングで予想外の結果でした。天の川銀河がどのように進化してきたかについて、まだまだ学ぶべきことが非常に多いということです」(Dasさん)。
今回発見された天の川銀河のハロー中の超高温ガス成分は過去に観測例がなく、これまでの分析で見落とされてきた可能性も考えられる。天の川銀河で観測される物質の量が理論予測よりもはるかに少ないという「ミッシングバリオン問題」の理解につながる成果となるかもしれない。
〈参照〉
- ESA:XMM-Newton discovers scorching gas in Milky Way's halo
- The Astrophysical Journal Letters:Discovery of a Very Hot Phase of the Milky Way Circumgalactic Medium with Non-solar Abundance Ratios 論文
- The Astrophysical Journal:Multiple Temperature Components of the Hot Circumgalactic Medium of the Milky Way 論文
〈関連リンク〉
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