銀河間を超高速で飛び回る星々

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位置天文衛星「ガイア」の観測データから、超高速で天の川銀河の近くを移動している星が20個見つかった。そのうち13個は他の銀河から天の川銀河へとやってきたものの可能性がある。

【2018年10月4日 ヨーロッパ宇宙機関

天の川銀河には1000億個以上の星が含まれている。そのうちのいくつかは秒速数百kmという猛スピードで運動しており、「超高速星」と呼ばれている。超高速星は銀河の中心近くで誕生し、銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールとの相互作用の影響で高速になって銀河の端のほうへと飛ばされたと考えられている。

オランダ・ライデン大学のTommaso Marchettiさんたちの研究チームは、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」の観測データから、新たな超高速星を探し出す研究を行った。ガイアは10億個以上の星の位置や距離、天球上の動きを計測しており、今年4月に公開されたガイアの第2期データ(Gaia Data Release 2; DR2)には、そのうち700万個の星について3次元の速度データが含まれている。

研究チームでは20個の超高速星を発見したが、そのうち13個は天の川銀河から逃げ出すのではなく、天の川銀河に向かってきているように運動していた。「これらの星は他の銀河からやってきたものかもしれません」(Marchettiさん)。

20個の超高速星の位置と軌道
20個の超高速星の位置と軌道を天の川銀河のイラスト上に示したもの。(オレンジ色の矢印)他の銀河から来たものと思われる13個の超高速星、(赤い矢印)天の川銀河の重力を振り切るほどの速度で銀河の外へ向かう7つの超高速星(提供:ESA(イラストと画像の合成)、Marchetti et al. 2018(星の位置と軌道)、NASA/ESA/Hubble(背景の銀河)、CC BY-SA 3.0 IGO)

天の川銀河へと向かってきている超高速星の起源は、天の川銀河の伴銀河である大マゼラン雲かもしれないし、もっと遠く離れた銀河かもしれない。もしそうした銀河から来た星であれば、星に残された情報から故郷の銀河に関する大きな手がかりが得られるかもしれない。これはちょうど、火星由来の隕石から火星について調べるようなものだ。

「超大質量ブラックホールとの相互作用によって、星は高速となり得ます。つまり、こうした星の存在は、超大質量ブラックホールが近傍銀河に存在する証拠かもしれません。あるいは、超高速星は過去に連星系をなしていて、その伴星が超新星爆発でなくなったために放り投げられて天の川銀河へやってきた可能性もあります。いずれにしても、これらの星を詳しく調べることで、近傍銀河で起こっているこの種のプロセスについて情報が得られるかもしれません」(ライデン大学 Elena Maria Rossiさん)。

別の説として、超高速星の起源は天の川銀河のハロー部分(銀河を球状に取り囲む部分)だというものもある。かつて天の川銀河に飲み込まれた矮小銀河の一つとの相互作用で星が加速され、天の川銀河の内側へ押し込まれたという考えだ。星の年齢や化学組成の情報から、その起源が明らかにできるかもしれない。「ハロー由来の星であれば、組成のほとんどが水素でかなり年老いているはずです。他の銀河を起源とする星は重元素を多く含んでいるかもしれません」(Marchettiさん)。

ガイアは、2020年代に少なくとも2回のデータの公開を予定しており、そのデータから、さらに多くの星に関するより正確で新しい情報が提供される見込みだ。「最終的に最大1億5000万個の星について、完全な3次元速度の計測が行われる予定です」(ガイアデータ加工・分析コンソーシアム・エグゼクティブ Anthony Brownさん)。

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