50億年後、太陽が死ぬと何が起こるのか
【2018年5月14日 The University of Manchester】
質量が太陽の数倍程度以下の恒星は、一生の最終段階でガスや塵の外層を放出する。その外層部分が、あとに残った高温の中心核に照らされて輝いて見えるのが惑星状星雲だ。惑星状星雲のなかには数千万光年彼方にあっても見えるほど明るいものもあるが、これは惑星状星雲になる前の恒星であれば暗すぎて見えないほど遠い距離である。
惑星状星雲「Abell 39」。ヘルクレス座の方向7000光年の距離に位置し、直径は約5光年、殻の部分の厚さは約3分の1光年(提供:WIYN/NOAO/NSF)
太陽も、あと約50億年ほどすると一生を終えるとみられている。その最終段階がどうなるかははっきりとはわかっていないが、太陽は軽すぎるため、見ることができるほど明るい惑星状星雲にはならないと考えられてきた。
ポーランド・ニコラウス・コペルニクス大学のKrzysztof Gesickiさんと英・ジョドレルバンク天文台のAlbert Zijlstraさんたちの研究チームは、恒星のライフサイクルを予測するモデルを新たに開発し、異なる質量や年齢の恒星から放出された外層の明るさを推測する研究を行った。
このモデルによると、外層を放出した後の星は従来のモデルに比べて3倍も速く温度が上昇するという。その結果、太陽のような低質量星でも、これまで考えられてきたよりもはるかに容易に明るい惑星状星雲が形成できることが示された。研究チームの計算によると、太陽の質量は、暗いながらも見ることができる惑星状星雲を作り出す下限近くであり、太陽よりも数パーセント軽い星では、惑星状星雲は見えなくなる。
今回のモデルは、約25年前に発見された観測事実の説明にもつながる。観測から、様々な銀河に存在する惑星状星雲のうち最も明るいものの本来の明るさはどれも同じであることが知られている。これは、太陽のような低質量星からも明るい惑星状星雲が作られうることを示しているが、従来のモデルによる理論では、太陽の2倍程度より軽い星から作られる惑星状星雲は暗すぎて見えないと考えられていた。この矛盾が、今回の新しいモデルで解決できたのだ。
「観測が非常に難しい遠方銀河内の数十億歳の星の存在を調べる方法が見つかっただけでなく、太陽が死ぬと何が起こるのかという疑問の答えも見つけることができました。素晴らしい研究成果です」(Zijlstraさん)。
〈参照〉
- The University of Manchester:What will happen when our sun dies?
- Nature Astronomy:The mysterious age invariance of the planetary nebula luminosity function bright cut-off 論文
〈関連リンク〉
- アストロアーツ 投稿画像ギャラリー:惑星状星雲
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