オウムアムアは「厚い有機物で覆われた雪玉」か

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10月に発見された恒星間天体オウムアムアには彗星らしき活動は見られず、岩石質であると考えられているが、これとは異なるモデルも提唱されている。

【2017年12月25日 クイーンズ大学ベルファスト

10月19日に米・ハワイのパンスターズ1望遠鏡で観測史上初の恒星間天体「オウムアムア」が発見されて以来、各国の望遠鏡でこの天体の観測が続けられている。オウムアムアは9月に太陽からわずか 0.25天文単位(約3700万km)の距離を通過していて、表面は摂氏300℃以上に熱せられたと考えられるが、彗星のような尾やガスの放出などは全く観測されていない。

オウムアムアの想像図
オウムアムアの想像図(提供:ESO/M. Kornmesser)

北アイルランド・クイーンズ大学ベルファストのAlan Fitzsimmonsさんたちの研究グループは、カナリア諸島のウィリアム・ハーシェル望遠鏡やチリの超大型望遠鏡VLTを用いてオウムアムアからの反射光の分光観測を行った。

「観測の結果、オウムアムアの表面は炭素に富んだ氷で覆われている小型の太陽系天体に似ており、おそらくは数百万年から数億年にわたって宇宙線に晒され、表面の構造が変成したものであることがわかりました。また、このような有機物に富んだ物質が0.5mくらいの厚さで表面を厚く覆っているとすれば、内部に彗星のような水の氷に富んだ核があったとしても蒸発からは守られうることを示しました」(Fitzsimmonsさん)。

一方、同大学のMichele Bannisterさんたちはハワイのジェミニ北望遠鏡などを用いてオウムアムアの多色測光観測を行い、オウムアムアの色は太陽系の外縁部に存在する氷に富んだ小天体に似ていることを明らかにした。

「オウムアムアは私たちの太陽系の外縁部に存在している小天体のような、宇宙風化作用の進んだ微惑星だと考えられます。その表面は灰色や赤色に近く、非常に細長い形をしています。おそらく大きさや形はロンドンの『ガーキンビル』に似ているでしょう。初めて見つかった恒星間小天体が私たちの太陽系の小天体とこれほどよく似ているというのは興味深く、太陽系での惑星・小惑星の形成過程が他の恒星の惑星系でも同じであることを示唆しています」(Bannisterさん)。