木星の赤道ジェットの逆転現象

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NASAの研究チームによる観測から、木星の赤道域で起こる周期的な風向きの変化のしくみが明らかになった。こうした東西交互のジェットは地球や土星でも見られるもので、太陽系内外の惑星大気の理解につながる成果だ。

【2017年12月22日 NASA

1883年、インドネシアのジャワ島とスマトラ島の中間に位置するクラカタウ火山が噴火し、その噴出物が成層圏内に吹く西向きの風によって運ばれている様子が観測された。さらにその後の気球観測から、風の流れる方向が周期的に逆転していることも判明した。約28か月の周期で起こるこうした風向きの変化は「準2年周期振動(Quasi-Biennial Oscillation:QBO)」と呼ばれ、成層圏下部からその下の対流圏(大気の最下層)との境界部まで発生する。QBOは、オゾンや水蒸気、大気汚染物質の移動に影響を及ぼすだけでなく、ハリケーンの発生とも関連している。

こうした東西交互に吹く風は、地球だけではなく土星や木星でも確認されており、木星の場合、地球上の約4年毎に変動するため「準4年周期振動(Quasi-Quadrennial Oscillation:QQO)」と呼ばれる。

NASAゴダード宇宙飛行センターのRick Cosentinoさんたちは、木星大気中に発生する様々な種類の波が振動の活発化にどれほどの影響力を持つのかなどについて調べた。木星のQQOは従来、成層圏の気温の測定をもとにした風速と風向きの推定から特定されていたが、今回はNASAの赤外線望遠鏡「IRTF」に搭載された高解像度分光器を用いて、北緯約40度から南緯約40度までにわたり垂直方向に広い範囲をカバーしたQQOの1周期全体の観測を初めて行った。

「計測では、木星の大気を垂直に薄くスライスして調べることができました。過去のデータは低解像度でしたから、基本的に大気の大部分が不鮮明なものでした」(NASAゴダード宇宙飛行センター Amy Simonさん)。

観測の結果、赤道ジェットが木星の成層圏のかなり高いところまで広がっていること、またQQOを引き起こしている主要因は(流体力学的な)重力波であることがわかった。低層大気中の対流によって生成された重力波が成層圏まで上昇していくことで気流の向きが変わるというしくみは、シミュレーションでも確かめられた。

地球のジェット気流の東西逆転についても、単独の要因ではないにせよ重力波が主に関わっていると考えられている。

木星の気象の理解を目指した新しいモデルを利用した研究の紹介動画(提供:NASA’s Goddard Space Flight Center/Scientific Visualization Studio/Dan Gallagher)

「今回の研究を通じて、低層大気と高層大気をつなぐ物理的なメカニズムへの理解が深まり、大気全体に対する理解が進みました。地球と木星には多くの違いがあるにも関わらず、両惑星における低層大気と高層大気の間を結ぶメカニズムは似ていて、同様の効果を生み出しています。わたしたちのモデルは、太陽系内の他の惑星や太陽系外の惑星にも応用できるかもしれません」(米・ニューメキシコ工科大学 Raul Morales-Juberiasさん)。

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