銀河衝突で誕生した超大質量ブラックホールのペア
【2017年9月25日 AAAS】
米・ロチェスター工科大学(発表当時)のDavid Merrittさんたちの研究チームが世界中にある複数の電波望遠鏡を使って、地球から約4億光年の距離にあるペガスス座の渦巻銀河「NGC 7674」を観測した。複数の望遠鏡を組み合わせて仮想的な単一巨大望遠鏡として用いることで、人間の目の約1000万倍も視力の良い、超高分解能が達成された。
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた渦巻銀河「NGC 7674」(大きい方の銀河)(提供:NASA, ESA, the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration and A. Evans (University of Virginia, Charlottesville/NRAO/Stony Brook University))
「2つのコンパクトな電波放射源がNGC 7674の中心に検出されました。どちらの電波源にも、ガスが降着している超大質量ブラックホールに関連する特徴が見られることから、これらはブラックホールのペアだと考えられます。ブラックホール同士の間隔は1光年以下で、これまでに直接撮像で検出されたペアのうち最も近いものです。2つのブラックホールの合計質量は太陽の約4000万倍、軌道周期は約10万年です」(Merrittさん)。
NGC 7674の中心に位置する2つのコンパクトな電波源(提供:TIFR-NCRA and RIT, USA)
このペアは、NGC 7674の前身である銀河同士の衝突・合体で形成されたと考えられている。「ブラックホール同士の連星は重力波を放出しますが、恒星質量ブラックホールの場合と異なり、超大質量ブラックホールの連星からの重力波は周波数が低く、重力波検出装置『LIGO』では検出できません」(Merrittさん)。
NGC 7674からは強い電波が放射されている。今回の観測から、アルファベットのZ字状に電波ジェットを放出する「Z型電波銀河」にコンパクトな連星が存在するという理論的な予測が確認された。「この形は、銀河同士の合体と超大質量ブラックホール連星の形成という複合的な効果の結果と考えられています」(Merrittさん)。
〈参照〉
- AAAS and EurekAlert!:When radio galaxies collide, supermassive black holes form tightly bound pairs
- Nature Astronomy:A candidate sub-parsec binary black hole in the Seyfert galaxy NGC 7674 論文
〈関連リンク〉
関連記事
- 2022/06/01 遠方宇宙でも銀河の成長を妨げるブラックホール
- 2022/04/18 クエーサーになる直前のブラックホールを初期宇宙でとらえた
- 2022/03/22 巨大ブラックホールの隣で起こったブラックホール合体
- 2022/03/02 合体目前の超大質量ブラックホール連星
- 2022/03/01 いて座A*の本来の姿は丸かった
- 2022/02/24 塵のリングに隠された超大質量ブラックホール
- 2021/12/21 天の川銀河中心のブラックホールを回る星たちの鮮明な姿
- 2021/12/06 2つの意味で最も近い超大質量ブラックホールのペア
- 2021/11/29 銀河中心ブラックホール周囲のガスの内部構造を観測的に解明
- 2021/10/15 生まれたてのジェットとガス雲の壮絶な衝突現場
- 2021/10/01 謎のガンマ線・ニュートリノの源は「暗い」巨大ブラックホールかも
- 2021/09/17 天の川銀河中心を回る星を電波で初観測
- 2021/07/27 電波銀河ケンタウルス座Aの巨大ジェットの根元にせまる
- 2021/06/15 131億年前の銀河に吹く超大質量ブラックホールの嵐
- 2021/06/10 最期を迎えた活動銀河核を発見
- 2021/04/19 電波からガンマ線まで、空前の多波長観測でM87のブラックホールジェットを撮影
- 2021/03/22 急激に成長中の隠れた超大質量ブラックホールを発掘
- 2021/03/15 電波源クエーサーの観測最遠記録を更新
- 2021/02/02 銀河の衝突で活性化も沈静化もする中心ブラックホール
- 2021/01/19 ブラックホールの「食事」で起こる、活動銀河の規則正しい増光