天の川銀河の物質の半分は別の銀河からやってきた
【2017年8月3日 RAS】
米・ノースウェスタン大学のDaniel Anglés-Alcázarさんたちの研究チームがスーパーコンピューターで銀河形成のシミュレーションを行い、銀河を作る物質の流れを追ったところ、天の川銀河などを構成する物質の半分は「銀河間の物質輸送」によって外からやってきたらしいことが示された。
天の川銀河のような渦巻銀河「M101」(提供:NASA)
小さい銀河で発生した超新星爆発で銀河のガスが吹き飛ばされ、そのガスが銀河風に乗って大きい銀河へと到達するという過程を経て物質の移動が起こるという。銀河同士は遠く離れているため、銀河風が秒速数百kmで広がっていくとしても物質の移動には数十億年もの時間がかかる。
小さい伴銀河から大きい天の川銀河へと物質が運ばれる様子を示したシミュレーション動画。緑の丸が伴銀河からのガス移動を表す(提供:Daniel Anglés-Alcázar, Northwestern University)
「銀河がどのように形成されたのかに関する理解を一変させる結果です。太陽系や地球、私たちひとりひとりを含め身の周りにある原子の半分は、天の川銀河固有のものではなく、最大で100万光年離れた銀河からやってきたことを示唆しています」(ノースウェスタン大学 Claude-André Faucher-Giguèreさん)。「私たちの起源は、思っていた以上に天の川銀河とは縁が薄いものなのです。反対に、身の周りのものと遠い天体との間のつながりを感じさせてくれる結果でもあります」。
「私たちを作る物質のうちどれくらいが他の銀河からやってきたのかを考えれば、私たちは『宇宙の旅人』あるいは『銀河外からの移住者』と言えるかもしれません」(Anglés-Alcázarさん)。
〈参照〉
- RAS News&Press:Milky Way’s origins are not what they seem
- MNRAS:The Cosmic Baryon Cycle and Galaxy Mass Assembly in the FIRE Simulations 論文
〈関連リンク〉
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