「ひさき」、木星オーロラの爆発的増光を観測

このエントリーをはてなブックマークに追加
惑星分光観測衛星「ひさき」とハッブル宇宙望遠鏡で、爆発的に増光した木星のオーロラが観測された。さらに木星探査機「ジュノー」の観測データを組み合わせることで、木星のエネルギー輸送機構の存在が明らかとなった。

【2017年5月25日 理化学研究所

太陽系で最大クラスの火山を持つ木星の衛星「イオ」は、二酸化硫黄などの火山起源のガスを木星周辺の宇宙空間に振りまいている。ガスは木星磁場に沿って極域に降り込み、大気と衝突したときに発光して、木星のオーロラとなって観測される。また、ガスの一部は加速されて高エネルギー状態となり、衛星「エウロパ」や「ガニメデ」の表面で化学物質の合成などを引き起こす。

しかし、こうしたガスの加速を引き起こすメカニズムやエネルギーの輸送については、観測的には実証されていなかった。木星周囲の宇宙空間を広範囲かつ連続的に観測できる機会が少なかったためだ。

理化学研究所の木村智樹さんたちの研究チームは、惑星分光観測衛星「ひさき」とハッブル宇宙望遠鏡で木星のオーロラを観測した。世界初の惑星専用の宇宙望遠鏡「ひさき」は、地上では観測できない微弱な紫外線で半年以上にわたって木星のオーロラの変動を10分ごとに連続監視した。また、ハッブル宇宙望遠鏡ではオーロラの形状を世界最高解像度で撮像し、オーロラと磁場を介して結合する広範囲の宇宙空間をとらえた。

その結果、2016年5月に、木星極域の中緯度から低緯度に向かって数時間程度で爆発的に増光するオーロラが発見された。「ひさき」のデータからは、オーロラの放射エネルギーが数時間で急激に増大し、その後20時間程度をかけて減少することが、ハッブルのデータからは、極域の中緯度領域から増光が始まり、増光した領域が低緯度に拡大していくことが明らかとなった。木星の赤道付近の上空遠方に出現した高エネルギーのガスが木星方向に輸送され、木星の磁場に沿って極域へ降下し、オーロラを爆発的に増光させたと考えられる。

木星オーロラの放射エネルギーの時間変動とそれに伴うオーロラ形状の変化
「ひさき」によって連続監視された木星オーロラの放射エネルギーの時間変動(上)と、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮像されたオーロラ形状の画像(下)。オーロラの放射エネルギーが数時間で急激に増大し1,500GWのエネルギーに至った後、20時間ほどかけて減少していることがわかる。このエネルギーの増大時、木星極域の中緯度帯に明るいオーロラが出現し(増光の開始)、その後低緯度方向にオーロラが拡大した(提供:理化学研究所プレスリリースより、以下同)

さらに、爆発的増光の約15時間前に木星探査機「ジュノー」が、木星へ伝搬する太陽風が作る衝撃波を検出していたことや、この時期にイオの火山活動も活発だったことがわかっている。

これらのことから、木星の遠方に大量に蓄積された火山ガスと木星磁場のエネルギーがあり、そこに太陽風の衝撃波が到達することによって磁場のエネルギーがガスに移動して高エネルギーガスが生み出された、その加速された高エネルギーガスが木星近傍まで輸送された、と考えられる。これは以前からの研究の仮説を裏付けるものだ。

木星のエネルギー解放と輸送過程
木星のエネルギー解放と輸送過程の概念図

ジュノーは2016年7月から木星の極域を通る軌道を周回しており、木星のオーロラのすぐ上空で磁場やガスを直接観測できるようになっている。今後、「ひさき」とハッブル、ジュノーの観測をさらに連携させることで、エネルギーがガスに移動する正確な位置や、エネルギー輸送を担うことができる物質・電磁場の正体の解明につながることが期待される。

関連商品

天体望遠鏡の像をパソコンに動画や静止画で取り込めるCMOSカメラ。月や惑星の観測や撮影を楽しめます。