接近した若い3連星の形成が進む現場

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若い星を取り巻く塵の円盤が分裂し、円盤内で若い3連星が作られる現場が、アルマ望遠鏡などによる観測で初めてとらえられた。

【2016年10月28日 アルマ望遠鏡NRAO

星は、ガスや塵からなる巨大な星間雲の中で物質が重力で集まって形成される。このとき、多くの星は単独で誕生するのではなく、2つや3つが同じところで生まれ連星として誕生する。

こうした連星は、星の間隔によって大きく2グループに分けられると考えられてきた。一つは太陽・地球間(1天文単位、約1.5億km)の約500倍以内という比較的近いもので、もう一方は1000天文単位以上の遠いものだ。そしてその距離の違いは、連星系の形成メカニズムの違いによるものだと予想されてきた。

遠く離れている連星系は、星間雲が収縮しきらないうちに分裂してそれぞれの場所で星が形成されると考えられ、この説は最近の観測からも支持されている。それに対して接近した系は、原始星を取り巻く小さな円盤が分裂し、そこで別の星が形成された結果だと考えられてきた。

米・オクラホマ大学/オランダ・ライデン大学のJohn Tobinさんたちの研究チームは、アルマ望遠鏡とカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群を使って、ペルセウス座の方向約750光年の距離にある、ガス雲中に存在する若い3連星系「L1448 IRS3B」を観測した。この系は、中心から残り2つの星までの距離が61天文単位と183天文単位という近い連星系で、まだ形成途中にあるために全体を大量の物質が取り巻いている。

L1448 IRS3B系
アルマ望遠鏡がとらえたL1448 IRS3B系。中心に2つ、左に1つ原始星が写っている(提供:Bill Saxton, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NRAO/AUI/NSF)

観測から、系を取り巻く円盤が渦巻き構造をしていることが明らかになった。渦巻き構造は、円盤が不安定になって分裂し、そこから別の星ができていることを示す証拠だと考えられている。近い連星系で実際に円盤が分裂しているらしい様子がとらえられたのは初めてのことだ。

「この系はおそらく15万歳以下でしょう。解析から、この円盤は不安定であることが示されました。一番外側の原始星は、形成からわずか1万から2万年ほどしか経っていないかもしれません」(米・アリゾナ大学 Kaitlin Kratterさん)。

L1448 IRS3B系は、円盤が分裂して進化のかなり早い段階で若い連星系が形成されることを証明する、観測的な直接証拠を与えてくれるものだ。「同様のプロセスが進行中の系が、今後他にも見つかると思います。こうしたプロセスが寄与している連星系の割合がどのくらいなのかが明らかになると期待しています」(Tobinさん)。