100年に1度、小惑星ベスタの「衝効果」をとらえた

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天体表面が太陽との位置関係により一時的にひじょうに明るく見える「衝効果」現象が、小惑星ベスタで初めて明確にとらえられた。

【2014年10月28日 JAXA宇宙科学研究所

JAXA宇宙科学研究所や国立天文台などの研究者を中心とする研究チームは、小惑星ベスタが100年に1度、ほぼぴったり太陽の正反対に来るチャンスに観測を行い、その表面が一時的にひじょうに明るく見える現象「衝効果」をはっきりととらえることに初めて成功した。

衝効果とは、天体が地球をはさんで太陽の正反対(衝)の位置、とりわけ位相角(太陽-天体-地球の観測者がなす角度)が1度以下の位置に来るときに一時的に鋭く光る現象だ。月、火星、土星の環、そして反射率の高い木星のガリレオ衛星など凹凸の多い天体表面や粒子の集合で観測されてきた。

2006年1月に衝を迎えた小惑星ベスタ
2006年1月に衝を迎えた小惑星ベスタ(「ステラナビゲータ」でシミュレーション作成)

ベスタの位相角が0.1度近くまで小さくなった2006年1月15日、西はりま天文台の200cmなゆた望遠鏡や国立天文台岡山天体物理観測所188cm望遠鏡など国内外で行われた観測の結果、衝効果が明確にとらえられた。

口径6.4cm望遠鏡で観測した小惑星ベスタ
JAXA相模原キャンパス屋上に仮設置された口径6.4cm望遠鏡で観測した小惑星ベスタ(中央)(発表資料より)

今回、位相角が0.1度付近まで観測できたことにより、位相角1度以下で急激に明るくなる原因が「干渉性後方散乱」であることがつきとめられた。これは、ベスタの表層が多重散乱を起こすほどある程度透明でかつ反射率が高い物質であることを意味する。また、天体衝突で形成されたレゴリス(堆積層)に覆われた表面は、ベスタ全体の平均密度の4分の1~2分の1という低密度であることも初めてわかった。

「干渉性後方散乱」の模式図
「干渉性後方散乱」の模式図(発表資料より)