「爆食い」の巨大ブラックホールが生み出すジェットの起源に迫る

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XRISMなどによる観測から、「爆食い状態」にある超大質量ブラックホールで、冷たいガス円盤がブラックホールの手前で途切れて高温のプラズマ流に変わり、そのさらに内側からジェットが噴き出す構造が明らかになった。

【2026年10月27日 東北大学】

多くの銀河の中心には太陽の数百万倍から数十億倍の質量をもつ超大質量ブラックホールが存在し、その一部は光速に迫る速度でジェットを噴き出している。このジェットは母銀河の形成や進化にも深く関わっていると考えられているが、どのように生み出されるのかは未だよくわかっておらず、盛んに研究されてきた。

ケンタウルス座A
(左)ジェットが見られる銀河、ケンタウルス座A(NGC 5128)。X線、サブミリ波、可視光線のデータから作成された擬似カラー画像で、中心から噴き出すジェットと内側の電波ローブが見える。(中)可視光線と電波のデータから作られた擬似カラー画像。左パネルの範囲をはるかに超え、上下それぞれ100万光年近くにわたって広がる「電波ローブ」と呼ばれる巨大な構造が見える。(右)銀河中心部のクローズアップ(電波画像)。中心から約4光年の範囲のジェットが見える(提供:(左)ESO/WFI (visible); MPIfR/ESO/APEX/A. Weiss et al. (microwave); NASA/CXC/CfA/R. Kraft et al. (X-ray)、(中)Capella Observatory (optical), with radio data from Ilana Feain, Tim Cornwell, and Ron Ekers (CSIRO/ATNF), R. Morganti (ASTRON), and N. Junkes (MPIfR)、(右)NASA/TANAMI/Müller et al.)

ジェットの形成については、超大質量ブラックホールの自転によって周囲の磁場がねじられ、磁場を介してエネルギーがジェットに供給されるという説が有力視されている。しかし、大量の物質を急速に呑み込む「爆食い状態」のブラックホールでは、周囲から集まってきた物質が円盤状に広がり、放射によって熱を放出して冷えることで、薄く冷たい円盤が形成される。このような円盤がブラックホールの近くまで広がっていると、ジェットの形成に必要な磁場が十分に蓄えられない可能性があり、「大量の物質を呑み込みながら、なぜ強力なジェットを生み出せるのか」という疑問があった。

東北大学の野田博文さん、名古屋市立大学の秦和弘さんを中心とする研究チームは、おうし座の方向、約4億2000万光年彼方にあり、中心に太陽の約6000万倍の超大質量ブラックホールが存在する電波銀河「3C 120」を対象として、日本のX線衛星「XRISM」と国際電波望遠鏡ネットワークを組み合わせた世界初の同時観測を実施した。3C 120の中心にあるブラックホールは、1年間に地球約10万個分という理論上の限界に迫る量の物質を呑み込みながら、強力なジェットを放っている。

東アジアVLBI観測網と米国超長基線アレイ
(左)東アジアVLBI観測網。現在19(中国4、日本12、韓国3)の観測局から構成され、今回の研究ではこのうち10局が参加した。(右)米国超長基線アレイ。アメリカ全土に配置された10台の電波望遠鏡から構成される。今回はこのほか、グローバルミリ波VLBIアレイ(米国・欧州・チリ・韓国・グリーンランドの18局)による観測も行われた。画像クリックで表示拡大(提供:(左)韓国VLBI観測網、(右)NRAO)

まず、XRISMがとらえたX線を精密に分析したところ、ブラックホールの強い重力の影響によってX線の波長が引き伸ばされていることがわかった。さらに詳しく解析した結果、ブラックホール半径の約20倍の地点で冷たいガス円盤が途切れ、その内側には数億度に達する高温のプラズマ流が存在することがわかった。これは、ブラックホール近傍の構造を理解する上で重要な成果だ。

一方、国際電波望遠鏡ネットワークでジェットの形状を詳しく調べたところ、ジェットはブラックホールに近づくほど細く絞り込まれていた。さらに、ジェットの根元は、XRISMで確認された高温のプラズマ流よりも内側、ブラックホールのごく近傍に位置していることがわかった。

今回の観測により、冷たいガス円盤がブラックホールの手前で途切れて、磁場を効率よく蓄えられる高温のプラズマ流へと変わり、そのさらに内側からジェットが噴き出すという構造が示された。この構造は、ブラックホールの自転エネルギーを利用してジェットを駆動するという考え方と整合的なものだ。爆食い状態のブラックホールが強力なジェットを生み出す仕組みの解明に向けて、理解が大きく前進したと言える。

研究成果の概念図
研究成果の概念図。(左上)XRISMで精密に測定したブラックホール周辺からのX線の「色」。白と青のデータは、XRISMに搭載された異なる観測装置による結果。一般相対性理論の効果によってX線の波長が引き伸ばされ、エネルギーが変化していることを示す。(右上)グローバルミリ波VLBIアレイによる、波長3mm帯で得られたジェットの画像。(下)爆食い状態の超大質量ブラックホール周辺の想像図。冷たいガス円盤がブラックホール半径の約20倍の地点で途切れ、その内側に高温のプラズマ流が存在し、さらに内側からジェットが噴き出している(提供:プレスリリース)

今回の成果は、超大質量ブラックホールがどのように自転エネルギーを取り出しているのかという、一般相対性理論にも関わる極限状態の物理を理解する上で重要な一歩となる。また、超大質量ブラックホール近傍の構造の理解を深めるとともに、ブラックホールと母銀河が互いに影響を与えながら急成長を遂げていた、宇宙が最も活発だった時代の謎を解き明かす上でも重要な手がかりになると期待される。

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